×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




3

はあ、とため息をついてとぼとぼと廊下を歩く。なんだか部屋に続く廊下がすごく長い。

…晴彦の言うことは、すごくわかるし正論だと思う。だけど、俺が高見沢に晴彦みたいに言えるかっていうと、きっと無理だ。

愛されてると思ってるけど、やっぱりすごく不安で。
付き合ってはいても、高見沢に言い寄る子は絶えない。高見沢はすごく優しくて、ちゃんと断りはするけれどだからといって邪険にすることはない。そのあとも、友達として普通に接する。話し掛けられたら対応するし、二人きりはないものの誘われたら遊びに行ったりご飯を食べに行ったりする。

…俺と、遊びに行くことなんて、滅多に…

ううん。実は付き合ってから、一度も俺と高見沢はデートってしたことがないんだ。
まったりおうちデートってのもない。家にいたらもれなく高見沢に襲われるし、休みも一日ベッドコース。
しかも、内容が段々過激になってきてる気がするし。

それって、どうなんだろうか。
求められることは、愛されてるってこととちゃんと比例してるのかな。

俺が、贅沢なのかな。

自分の読んでるBLにも、同じシチュからのハピエンは山ほどあったはずなのに自分に当てはめると 悲恋の結末にしかならなくて…自分の意気地のなさにますます気分が落ち込んでしまった。

「…よし」

今日、思いきって誘ってみよう。高見沢と、デートがしたいって。
幸い明日は土曜日だ。外出申請は、当日の朝10時までならオッケーだったはず。
いつまでも晴彦に甘えてばかりいられない。今までどれだけ泣きついたと思ってんだ。晴彦だって、彼氏ができて、しかもその彼氏は晴彦にベタぼれで超構ってちゃんだ。俺のせいで二人きりの邪魔ばかりしちゃいけない。自分でできることは、できるようにならなくちゃ。

ぱん、と頬を叩いて気合いをいれて、部屋の扉を開ければ真ん前に高見沢がいて超びっくりして叫んでしまった。

「ぎゃー!」
「うるせっ!なんだよ!」

高見沢が耳を塞いで顔をしかめる。いや、仕方ないじゃん。そんなとこにいるとか思わないでしょ!

「遅かったな」
「あ、うん。ちょっと晴彦んとこに行ってたから」
「そうか」

背中を向けて靴を脱いでいたら、ふいに抱きしめられてどきんとした。

「なななななに」
「いや、別に?」

別にって言いながら耳にキスするのやめて!

「千里が悪い。エロいケツを向けるから」
「靴を脱ぐのに後ろ向いただけじゃん!ちょ、まじやめっ、」
「だぁめ。明日は土曜日だからな、ゆっくり愛し合えるだろ?」

前に回された手がさわさわと服の上からいたずらを仕掛けてきて、体がかっと熱くなりかけたけど高見沢の言葉で我に返った。
そうだ!明日は、デートしたいって誘うって決めたんだ!

「高見沢!」
「あいたっ!…なんだよ、千里ぉ」

力じゃ敵わないから、首をぐぐぐと前に倒してから思い切り上げて後頭部で頭突きをかますと鼻を打った高見沢はその衝撃で俺を抱き締めていた腕を離しちょっと涙目になって鼻を押さえながら俺を見た。
眉が下がって、きゅうんとワンコみたいでちょっときゅんときた。じゃなくて!

「明日っ!あ、明日、出掛けたい!」
「は?」
「は?じゃなくて!あの、街、街に…」
「…ああ」

やった、わかってくれた!『ああ』って今の、肯定の返事、だよな?

「だから、今日は…わっ!」

早く寝ようぜ、と続けようとする前にひょいと抱き上げられて、そのまますたすたと歩いて高見沢が向かっているのはどう考えても寝室だ。あ、寝かせてくれるのかな?でも俺、まだ晩めし食ってないんだけど…

「高見沢…うわっ」

ベッドに投げ落とされ、スプリングで跳ねた体の上にさらに重みが加わる。あれ?なんでそんなちょっと悪いお顔してるの、たかみん。

「た、高見沢…?」
「…悪い子だな、千里。二人きりで愛し合える休みよりBL本を買い漁りに行きたいなんて…」
「は、はあ!?ちが…」
「お仕置きだな」

悪魔のような顔をして近付いてきた高見沢に誤解を解く隙さえも与えられずに口を塞がれ、そのあとはまともに話なんてできないほど責められた。

[ 176/215 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



top