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「愛が痛い」
「なにがだ」
それから一週間、俺は晴彦の部屋でソファにうつ伏せに寝転びながらぐだぐだと愚痴を聞いてもらっていた。
相変わらずつっけんどんでひじょーーに冷めた目をしていらっしゃいますな。クールビューティー。
「毎日、ってさあ…結構腰にクるよね。受けって大変…」
「…それだけか?」
「え?」
「不満なのは、それだけか?と聞いてるんだ」
伏せていた顔をあげて晴彦の方を見れば、晴彦は読んでいた本から顔をあげて俺を見ていた。
…なんで、わかるんだろう。晴彦には、ごまかしや嘘なんて通じないなあ。
「…あの、さ、」
ゆっくりと起き上がって、無意識に指遊びをしてしまう。
「その…、求められるのは、嬉しいっつうか…、けど、さ、」
最近の高見沢は、とにかく多種多様で。一体どこで覚えてくるのやら、色んな体位や言葉責めなどもされる。
前までは、俺が読んでる本だったり除き見たシチュだったりをわざとしてきたりしていたんだけど、最近はそれだけじゃなく『えっ?』と思うような虚を突くようなことをするのだ。
もちろん、す、好きな人だから、全てに応えたいとか思う。
だけど…
「聞けばいいじゃないか。変態プレイが趣味なのか?って」
「どストレート!」
「それ以外何がある」
もう、もう!晴彦ちゃんてば、もうちょっとオブラートに包んでよね!
「なんだ?変態プレイがしたいなら言えばいいのに、遠慮するなよ」
「一言も言ってない」
ふいに寝室から現れて、晴彦ちゃんを後ろから抱き締めて耳をなめたのは晴彦の彼氏、四天王寺那岐生徒会長だ。
あら…上半身裸でフェロモンむんむん。昨日お泊まりしてたのね。
「いいじゃねえか、変態プレイ。乳首の部分の空いたブラにちんこの部分がヒモになってるパンツはかせてお前の身体中に生クリームを塗りたくってナメしゃぶってやりたいぜ」
「洗濯と掃除の大変なプレイはお断りだ。那岐、いたずらはやめろ」
な、なんちうことをさらりと言うのよ、この歩く18禁!
晴彦ちゃんも慣れているのか耳を甘噛みしたり襟元から手を入れたりする会長をあしらって引き剥がす。
晴彦ちゃんてば相変わらずの辛辣な返しをしてて、それでも四天王寺会長は嬉しそうに晴彦にくっついている。
…いいなあ。
「まぁたうじうじくだらねえことで悩んでんのか、不細工平凡。もうブチ込まれてんだろ?なんも考えずやられる方は素直にアンアン啼いてりゃいいんだよ」
「卑猥!」
「那岐」
呆れたような顔をしながら言うような言葉じゃないよ、会長。
だけど、いつもいつも、俺がうじうじ悩んでると会長はとんでもない事を口にして俺を慰めてくれる。ほんとは優しい人なんだ。
「なんだ?心配なら正直に言え、『変態プレイで慣らされちゃったら淫乱ユルマンになりそうで怖いです』ってな」
「んなっ!」
何て事言うの会長ってば!
「なんの取り柄もねえ平凡なんだからそんくらいになった方が相手は喜ぶだろうがな」
「か…かいちょのばかあああ!そんなんなって喜ぶの会長くらいだもんー!」
慰めてくれてる、とは思っていいんだろうか!
思わずわあっと泣きながらリビングから駆け出すと、玄関の所まで晴彦がついてきた。
「千里」
少し低めの、いつもの柔らかい声で名前を呼ばれ顔を向けると腕を組んで壁にもたれる晴彦のはるか後ろのリビングで会長が頭を押さえてうずくまってたから晴彦に鉄拳をくらったんだろう。
「前からいつも言ってるだろう。お前は一人で抱え込みすぎる。ちゃんと思ったことは口にしろ。愛する彼氏なんだろう?」
「…」
晴彦の言っていることは理解はできても、頷く事はできなかった。
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