×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




1

葵様リクエスト、9000000hitで『赤の盟約』の続編です。久しぶりのこの二人、リュディガーが若干キャラ崩壊しておりますがご容赦ください^^;
※注意※ 人外、男性による妊娠、出産の表現がございます。苦手な方はご遠慮ください。

頑張ります!
ではどうぞ♪

―――――


「ロルフ、どこへ行く」

低く美しいバリトンボイスに耳を撫でられ、振り返って自分を階段の上から見下ろす美しい男を見てロルフは小脇に抱えた本を持ち上げた。

「本を書室に返しに…」
「一人で出歩いて何かあったらどうするつもりなんだ、使用人か私を呼べと言ったろう」
「…リュディガー、俺も何度も言ったはずだよ。大丈夫だって」
「何が大丈夫なものか!お前は特別な体なんだぞ!」

泣きそうに眉を下げながら大きな声で怒られ、ロルフは困った顔をして小さくため息をついた。

「リュディガー…」
「はっ!す、すまない!大きな声で怒鳴るなどと…お前の心に動揺を与えてしまうような行為をしてしまった!よしよし、いい子だ。父はなにも怒ってなどおらぬぞ〜」

そんなロルフを見て、あからさまにショックを受けて階段をかけ降りてきた美青年は、ロルフと呼んだ青年に駆け寄ると同時にその傍らにしゃがみこみ、ロルフの腹をそっと撫でながらそこに向かって話しかけた。


ここはヨーロッパのとある都市、人ならざるものだけが住む町だ。ヨーロッパのある一点、誰も知られざる箇所に人間には認識のされない点がある。いわゆるモンスターと呼ばれるもの達だけが通過できるその点は、別の世界への入り口でありその入り口の先、そこはモンスター達の国であった。

ここはその国にある都市の一つ。先ほどリュディガーと呼ばれた吸血鬼の治める国の領土のうちの一つだ。

そして、その領主であるリュディガーに腹を撫でられながらまたため息をつく大人しい見た目の平凡だがたくましい体をした青年は、ロルフ。リュディガーに見初められ、その伴侶となった人狼だ。

様々な障害を乗り越えて結ばれた二人は、誰から見ても幸せそうで誰もが羨む仲の良い夫婦だ。
まさか今の姿からは、かつてのリュディガーは冷酷非道な吸血鬼であったなどとは想像もできないだろう。

リュディガーは、ロルフを愛して変わった。

愛を知り、愛されることを知ったリュディガーは己の愛しき伴侶であるロルフを愛でて愛でて止まない。
モンスター達は、性別など関係なしに子をなすことができる。そして、今まさに、ロルフはその身にリュディガーとの子を宿していた。

それからが、大変だったのだ。懐妊を知り、大喜びしたリュディガーは今まで以上にロルフを大事にするようになった。そして、ネットで妊娠についての知識を勉強したのだが、注意事項の箇所だけを過剰にその脳にインプットしてしまった。
それはそれでいいのだが、リュディガーの場合はいかんせんやり過ぎるのだ。きっかけはロルフが移動するときに不注意でテーブルに腰を軽くぶつけたことに始まった。

いたた、とぶつけた箇所をなでさすった瞬間、リュディガーが血相を変えて飛んできた。

見たこともないほどに取り乱し、ロルフをがばりと抱えあげたかと思うと寝室に運び込み至急に医者を呼び寄せた。
絶対的領主にオーラを全開に撒き散らしながら『一分以内に来い』と脅され来ないバカはいないだろう。
服装を乱しに乱し息を荒げて屋敷に転がり込んできた医者にロルフは何度も謝罪した。

リュディガーは、それから、ロルフが一人で出歩くことを禁止した。
何をするにもどこに行くにも、とにかく人をつけろと言い、自分がそばにいるときははし一つ本一つ自分で持とうとすると飛んでくる。
何度大丈夫だと言っても聞かないのだ。
そして、妊娠中の母親にストレスやショックを与えると胎児に影響を与えること、腹の中で外の声を聞いていることを知り、少しでも何かあればこうして話しかけあやす。

「…お腹にいてこれなのに、生まれたらどうなるんだろうね」
「うん?何か言ったか?」
「ううん、心配かけて申し訳ないなあって言ったんだよ」
「何を言う、お前と腹の子は私の宝だ、命だ。それを心配するのになんの咎がある」

ため息をつきながらそれに少しうんざりしながらもロルフは、己の腹を撫でながらでれでれと話しかけるリュディガーを見て、まあいいか、と許容し、それを心の中で嬉しく思うのも確かなのだった。


[ 164/215 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



top