×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




8

「ちっ…、結局元サヤか」
「元サヤじゃないも〜ん、恋人どーしになったんだも〜ん」

生徒会室でお仕事してたら、会長が舌打ちしながら話を振ってきた。舌打ちとかひどくない?

「残念だな。俺の所に来たらどろどろに溶かして可愛がってやったのに。俺はお前みたいに手当たり次第じゃなく一途だしな、あいつだけを啼かせてやったのに」
「もう俺だってルイくんだけだも〜ん。それに…」

会長がにやりって挑戦的に笑いながらルイくんを抱く、みたいなことを言うからふ〜んだって口を尖らせて言い返す。会長、わかってないんだから。ルイくんはねぇ、可愛いんじゃないんだよ。
それを言おうとして、俺を抱くときのルイくんを思い出して顔が熱くなった。
急に黙りこんで様子のおかしくなった俺を会長が不思議そうな顔で見る。

「なんだよ?」
「…っなんでもなぁい!職員室行ってきま〜す!」

先生に渡す書類を手に、ぱたぱたと部屋を出る。危ない危ない、ついうっかりルイくんがどれだけかっこいいかを言いそうになっちゃった。
会長のことだから、ルイくんがかっこいいなんて行ったら絶対に試させろとか、そんなやつを屈伏させるのが楽しいとか言って余計にルイくんにちょっかいかけようとするに決まってるもんね。

ただでさえルイくんはそのかわいらしさで人気なんだもん、余計な心配が増えちゃうなんて冗談じゃないもんね。

初めて抱かれた日から、俺はすっかり遊びぐせがなくなった。もちろんルイくんっていう大事な恋人がいるからっていうのと、あと、タチとしての欲が全く無くなってしまったのだ。ルイくんを見てもかわいいなとは思っても、抱きたいなんて思わない。すっかり身も心もルイくん専用ねこちゃんになっちゃった。

お付きあいを公表したら、意外に親衛隊の皆は祝福してくれた。あの、ルイくんを糾弾した時、自分達で確かめもせずに俺のことを悪くいって傷つけてごめんなさいって謝ってくれた。そんな風に言われるだなんて思ってもみなかったからすごくびっくりしたんだけど、俺もちゃんと皆に謝ったんだ。
…前隊長だけは悔しそうな顔をして『目を覚ましてください』だなんて言ったりしてたけど、他の隊員の子たちがどこからか現れて俺を守ってくれたりする。もちろん、ルイ君もね!
俺を守ろうと、凛とするルイ君はホントにかっこいいんだよ。


ぱたぱた顔を扇ぎながら歩いてたら、前からかわいこちゃんが歩いてきてぱちりと目があった。いつものくせでにっこり笑って会釈すれば、かわいこちゃんはぽっとほほを染めて急にしなを作って俺に近寄ってきた。

「会計様、こんにちは。…おひとりですかぁ?」「あ、うん。職員室に行くんだあ」

きゅるん、と目をぱちくりとさせて上目使いで話すかわいこちゃん。かわいいなって正直に思ったけど、あ、これってお誘いだなって雰囲気でわかる。

「あの、えと…、そのあと、おひまかなって…」

ルイくんとお付きあいするようになったことを公表はしたけど、俺がねこちゃんだとかは言ってない。だから、今でも遊び人だったときのクセは抜けないでしょとか、ルイくんよりもかわいいんだって自信のある子はこうして俺が一人の時にはモーションをかけてくる。
もじもじと赤くなるかわいこちゃんにどっか体の奥がうずってなる。
かっわいいなあ。でも…

「あの…」
「栄さま」

返事をしようと口を開いた瞬間に後ろから聞こえた声にどきりとした。
俺にお誘いをかけてた子が、俺の後ろを見て慌てた顔をしてる。
振り返れば、そこにいたのはやっぱりルイくんで、そのかわいらしいお顔ににっこりと花のような笑顔を浮かべていた。

「職員室ですか?では一緒に参りましょうか」
「あ、う、うん…」

話をしていた子にじゃあね、と言って歩き出したら、後ろからルイくんも着いてくる。
すれ違う瞬間に、かわいこちゃんに向かってルイくんが何やら耳打ちをして歩き出せば、いつもなら真っ青になるはずのかわいこちゃんが真っ赤になった。不思議に思ってルイくんの後ろを着いていきながらちらりと振り返れば、かわいこちゃんがぽやんとルイくんを見つめていた。
絶対、絶対ルイくんがなんかかっこいいこと言ったんだ。だって、ルイくん俺を抱くようになってから、ふとした時にすっごいオスのフェロモン出るんだもん。生粋のねこちゃん達にはわかるんだよ、『この人オスだ』って!

「栄さま」

むうう、と膨れっ面をしていたら急にルイくんが振り返って、ふくれ面のまま『俺ちゃんおこなんだから!』とご機嫌ななめなのを分からせてやろうとルイくんを見れば、ルイくんの方が笑っているはずなのにその顔を見てひやりとおしりが冷たくなる。

「しょうがない人ですね…あんなに毎日かわいがってあげてるのに、まだ足りないんですかね?」
「え、な、なんで…っ、あ!」

つかつかと俺の真ん前まで歩いてきて、笑顔のままぎゅっと俺のおしりをわしづかみにした。
なに、なにしてんのルイくん!誰もいないって言っても、誰か急に通るかもしんないのに!

「あんなかわいい子に言い寄られて、ちょっといいかなとか思ったんじゃないんですか?何だかとろんとした雰囲気出てましたし」
「あ、あ…」
「例えばやっぱり誰かを抱きたいって言っても許しませんけどね。言ったでしょ?そんな気が微塵も起きないほどあなたに僕を刻み付けますから」

俺に抱きつくような形で掴んでいるおしりをぐにぐにと揉まれ、ちょうど鎖骨の辺りにルイくんの口が触れる。
囁くように話すルイくんの吐息と唇が触れ、ぞくぞくと背中に快感が走る。

「ちが、ちがうもん…、おれ、ルイくんだけだもん…」
「…ふふ、かわいい人」
「ひゃあん!」

首筋に軽く歯を立てながらおしりの割れ目を指でつううと撫でられてびっくんって体が跳ねちゃった。
だけど、一気に熱を持つ俺の体からルイくんはさっと身を引く。なんで?ととろんとした目を下げながら見つめれば、ルイくんはあの初めての夜の時のようにものすごく獰猛な目をしながらにっこりと笑っていた。

「続きは、夜に…ね」
「…!」
「さ、行きましょうか。職員室でしたよね?」

さっきまでのエロい雰囲気はどこへやら、一瞬にしてきちんと親衛隊長の顔になったルイくんに、俺の方がチワワちゃんみたいな顔になる。
今わかった。さっきかわいこちゃんにお誘いかけられた時にうずってなったのって、同じねこちゃんの気持ちになったからだ。

俺、もうだめ。

「ルイくん」
「はい?」

くいくい、と先を歩くルイくんの服の裾を軽く引っ張り、振り返ったルイくんを見つめる。

「おれ、もう、ルイくんじゃないとだめだよ。ルイくん専用のねこちゃんになっちゃった。ねこちゃんって、例えチワワちゃんでも、わんちゃんには弱いんだよ」
「…栄さま」


真っ赤な顔をして嬉しそうに目を細めたルイ君は、そっと俺に近づくと背伸びをして俺の首に軽く歯を立てた。
たったそれだけで捕食される直前の獲物のような気分になる。

「僕だって、栄様にしか従いません。あなた専用の、忠犬になって差し上げますよ」

優しく喉元に立てられた牙に簡単に屈伏しちゃう。だから、ねえルイくん。その牙で、甘く優しく俺を食べてね?



end

[ 162/215 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



top