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おまけ

委員長が出ていったとき、どうしていいかわからなかった。

俺は小さい頃から人見知りが激しくて、何か話すときにたくさん考えてからやっと口にできる方で考えてる間の顔が恐いって知らない間に遠巻きにされる事が多かった。

母さんはいつも遅くまで帰ってこないし、友達もいない。そんな俺は絵本が一番の楽しみだった。そんな中でも、一番好きになったのがべあくん。
べあくんは、くまだからという理由で皆から恐がられて誰からも相手にされないくまさんだった。だけど、誰より優しくて、皆に話しかけてもらえなくても黙って困っている誰かを助ける。
どんなに泣いている子でも、べあくんが『大丈夫だよ』って抱き締めるとそのあったかさに安心するんだ。

そんなべあくんが、大好きで、初めて母さんに自分からおねだりしたぬいぐるみは母さんや友達の代わりにいつも俺のそばにいてくれた。

それは高校になっても変わらなかったけど、入学してしばらくしてから一緒の部屋になった風紀委員長。初めはちょっと怖かったけど、一緒にいるうちにすごくいい人だなって思うようになった。
委員長は、俺が答えを口に出すまで待ってくれる。俺と普通に接してくれる。

そんな人は今までいなくて、強くて優しくてかっこいい委員長がどんどん好きになった。
委員長は、俺のことをわかってくれるんだってすごくすごく嬉しかった。俺も何か委員長の役に立ちたくて自分なりに考えて動いたんだけど、なんでかわからないうちに俺は悪者になってて委員長からひどく嫌われた事があった。

あの時の悲しみや苦しみは、今でも思い出すとつらい。

だけど、そのあとちゃんとお互い和解して、委員長は俺のことを好きだって言ってくれた。すごくすごく嬉しかったけど、ビビりな俺はまた今度同じ様に大好きな委員長にあの時みたいにされたら今度こそ立ち直れない。正直にそう伝えたら、いつまでも待つからって言ってくれた。
それで、委員長の言葉に甘えすぎちゃってたのかな。
いつまでたってもべあくん越しにしか気持ちを伝えない俺は委員長を怒らせちゃった。

『そのくま以上に大事なものになれない』って言って出ていった委員長を、追いかけることなんてできなかった。
だって、べあくんは俺の兄弟で、委員長は好きな人で、比べることなんてできなかった。

それからいっぱい、いっぱい考えたけどやっぱり答えはそうにしかならなくて。
委員長が出ていってから毎日泣きながらべあくんに相談して、考えて、やっぱりどっちも大事だって気付いた俺はべあくんは委員長の目に触れないようにしようって考えた。
前の時は、べあくんを誰か優しい可愛がってくれる人に渡してくれるならって、委員長から嫌われたし、学校の風紀委員からの処罰だったし、どうすることもできなくなって手放そうとした。だけど今回はそうじゃない。
それで、自分の答えをちゃんと伝えよう。それでもだめだったら、諦めよう。

そう考えて部屋を片付けて、委員長が帰ってきたときに俺は自分の気持ちを素直に伝えたんだ。
そしたら委員長がボロボロと泣きはじめて、俺はやっぱりだめだったんだって何回も謝った。けど、そうじゃなくて、俺が言ったことが嬉しくて泣いたんだって言った。

委員長がすごくいとおしくなって、何回もキスをしたら、少しも離れたくないとばかりに追いかけてくる。
俺が離れようとするとものすごく不安げに目で追いかけてくる。手を伸ばせばぎゅうとしがみついてくる委員長がものすごくかわいくて、そんなにも俺が伝えたことで喜んでくれるだなんて思わなくて嬉しくて抱き締めた。
同時に、今まできちんと伝えなかったことで本当に悲しい思いをさせてしまってたんだって反省した。

そのあと、なんでかいきなり野獣になっちゃった委員長にまんまと食べられちゃったわけなんだけど…目が覚めて、今まで以上に優しく微笑んでくれる委員長に幸せを感じた。
その時に、委員長からべあくんに対して思っていたことを聞いた。べあくんを嫌いなわけじゃない、また部屋に置こうなって言ってくれた。
すごくすごく嬉しかった。
だって、べあくんの事を俺の弟だろうって言ってくれたから。

だけど、そのすぐあとに、委員長がべあくんにキスをした。

ほっぺに、軽く、ただのあいさつ程度だったんだろうけどそれを見て俺はすごく嫌だった。

委員長は、俺のだもん。

そう口にして、初めてその時に『あ、そうだったんだ』って気付いた。
委員長も、おんなじ気持ちだったんだ。大好きだけどあげたくない。大事だけど自分以外にしてほしくない。


これがやきもちなんだ、委員長もこんな気持ちだったんだって気付いたら余計に申し訳なくなった。

委員長、ごめんね。
でも、べあくんもごめんね。

俺、好きな人ができてちょっぴりわがままで欲張りになっちゃったみたい。
真っ赤になった委員長が嬉しそうに俺にキスをしてきたとき、ちらりとべあくんを見てちょっとだけ見せつけるように牽制したら、べあくんがうんざりしたように顔をかくして、でもなんだかあったかく見守ってくれてるような気がした。



end

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