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その後、気を失った榛原を風呂場に連れて行き体をきれいにして後処理も丁寧にしてやる。指を入れた時に中をかき出すために動かせば意識がないながらも鼻に抜けるような甘い吐息が榛原から漏れ、反応する息子を必死に抑えた。

風呂から出て身体を拭いてきれいにしたベッドに寝かせて、一緒に潜り込んで榛原を抱きしめると、眠りながら無意識に俺を抱きしめ返してくれた。全身を満たす大きな幸福感に身を委ね、榛原を抱きしめながら眠った。

目がさめると少し早い時間で、おそらく起き上がれないだろう榛原のために二人とも休む旨を連絡し、ついで副委員長の吉木にも連絡を入れれば心底安心したように『良かったですね』と言われた。吉木が俺の背中を大きく後押しして叱ってくれたことを後で榛原にも伝えよう。
俺と同じように、吉木をいつか許してくれますように。

スマホの通話オフボタンを押したところでもそりと後ろで動く気配がし、振り向けば榛原が少しとろんとした目で俺を見つめていた。

「いいんちょ…、おはよ…」
「すまない、榛原、起こしたか?」
「…ううん。学校…」
「大丈夫だ、気にするな。先ほど俺と榛原は休むと学校には連絡をした。初めてなのに無茶をさせたからな。身体が辛いだろう?」
「からだ…?、あ、」

腰掛けていたベッドの縁から榛原の方へ身をよじり髪を撫でながら告げればなんのことかと不思議そうな顔をして、昨日のことを思い出したのか榛原の顔が一瞬にして真っ赤になった。
恥ずかしかったのかシーツを手繰り寄せて顔を隠すように潜り込んだ仕草がかわいくて、その上からキスを落とす。

おずおずと目だけをシーツから出して俺を見つめるその目が優しく緩められていて、同じ様に笑みがこぼれた。

「榛原、昨日はちゃんと言えなかったが…べあくんの事で、悲しませて、傷つけてすまなかった。べあくんが嫌なわけじゃないんだ。嫉妬しただけなんだ」
「しっと…?」
「…ああ。情けない話だが、べあくんの方が、その、お前にいつも直接好きだと言ってもらえるだろう?いつも、その…お前に抱き締めてもらってるし、大事にしてもらってるし、…ぬいぐるみに、やきもち妬いたんだよ。すまない…」

素直に自分のこじれた心を白状すれば、榛原は申し訳なさそうな顔をした。

「…べあくん、嫌いじゃない…?」
「ああ、べあくんが嫌いなわけじゃない。ただ俺がガキだっただけだ」
「…帰ってくる?委員長、俺のそばにいてくれる…?」

不安げに問われた言葉は、想像もつかない言葉で。
今まで感じていた不安だとか、焦りなどを全て吹き飛ばすほどに強烈に俺の全てを満たす。

「ああ、もちろん。榛原が嫌がってもそばにいる。もちろん、べあくんもな。またリビングにも置こうな。大事なお前の兄弟だからな」

少し泣きそうになりながら榛原にキスを一つ落とし、床に座らされていたべあくんを抱き上げて榛原のそばまでもどる。べあくんの手をもって榛原に向かって振ってやれば嬉しそうに微笑んで寝転びながら片手を伸ばしてべあくんの手をきゅっと握った。

「お前の弟になるのかな?なら俺にとっても大事な弟だ。これからもよろしくな」
「…!」

後ろから少し覗き込むようにしてべあくんに挨拶をしてから、その頬にちゅっとキスをしてやれば榛原が目を丸くして見つめてきて、それから悲しそうに眉を下げた。
しまった、大事なべあくんにそんなことされたくなかったかと謝罪を口にしようとすればそれよりも先に榛原がべあくんを抱く俺の手をすがるように掴む。

「…だめ」
「あ、ああ、悪い…」
「べあくんにちゅーしちゃだめ…、い、委員長は、俺のだもん…べあくんにちゅーしちゃだめ…」

真っ赤になって放たれた言葉が矢になって心臓を貫いた。
初めから、俺もそうすればよかったんだ。
榛原のように、素直に自分の気持ちをぶつければよかったんだ。

「負けた」
「んあ?…ぅんっ、」


抱き上げたべあくんをそっと傍らに置き、この誰よりも愛らしい俺だけのテディベアにキスをすれば、なんとなくべあくんが目を覆って『勘弁してよ』と言っているような気がした。



end

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