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4

「最近楽しそうだな?」

いつものように昼休みに向かった中庭で、友人がにこにこと嬉しそうな顔でそうつぶやいた。そんなに顔に出ていたんだろうか。指摘されて赤くなった顔をすりすりと触ると友人はカラカラと笑った。

「最近のお前、前みたいにどうなってもいいって顔してねえもんな。あいつともしかして上手くいってんのか?」
「う…ん。そう、かな…」

上手く、いっているとはいいがたい。前よりは、確かに距離は近くなっているような気がする。今まで許してもらえなかったことを許してもらえたり、外に出る回数が減ったり…。

家の中に浮気相手を連れ込むことも、最近ではない。俺が部屋に行くと必ずと言っていいほどにいた相手はあの追い出された彼女が最後で、外ではどうか知らないけれどあれからはずっと二人きりが多い。

一度、ご飯を作ってそのまま帰ろうとしたら呼び止められて一緒に食べる様に言われた。それも、今までではなかった命令で。それから天ケ瀬に呼ばれて家に行った時は、必ず一緒のご飯を食べるように言われている。二人で囲む食卓なんて夢にも思わなかったからただそれだけで泣きそうになった。別に会話があるわけじゃないけど、それでも付き合って初めてもたらされた二人だけのゆったりとした時間。俺は天ケ瀬に甘えてそれを味わわせてもらっていた。

「…よかったな」

友人が弁当を食べる手を止めて、俺の頭をぐりぐりと撫でた。ありがとう、と礼を言おうとして顔を上げた時、目の前に冷え切った目で俺を見下す天ケ瀬がいて、俺も友人もあまりの雰囲気にその場で固まってしまった。

「…あ、」
「来い」

俺の頭に乗せていた友人の手をばしん!と思い切りたたき落とすと、天ケ瀬は俺の腕を掴んで立ち上がらせて歩き出した。

「あ、天ケ瀬!やめろ、ひどいことすんなよ!」
「離せ」
「天ケ瀬!」

一瞬何が起こったのかわからずぽかんとしていた友人がすぐに慌てて立ち上がり、俺の手を握る天ケ瀬の手を掴む。それに嫌悪を隠そうともせずに舌打ちをして、反対の手で思い切りまた友人の手をたたき落とした天ケ瀬に思わず名前をきつく呼んだ。

「…あ、あまがせ、」

じろり、と睨まれて一瞬にして竦み上がってしまう俺を無視して、天ケ瀬が再び手を引き歩き出す。また俺たちを引き止めようとした友人に無言で首を振り、天ケ瀬にばれないように微笑んで小さくこくりと頷く。

心配かけてごめん。でも、俺は天ケ瀬の物だから。

これからどれだけひどい仕打ちが待っていようとも、天ケ瀬に逆らうなんてできるはずがないんだから。

無言で引かれ連れてこられたのはいつもの天ケ瀬の部屋で、何が、と思い辺りを見渡すと、天井を見上げた時点で俺は寝室のベッドに突き飛ばされた。

「な、」

急な事で驚きはしたが、ベッドの上だったので特に痛みもなく、ただどうしてそんなことをされたのかが全く分からなくてじっと相手を見つめる。

「脱げ」

聞いたことの無いような冷えた声で命令され、体が震える。

怖い。

それでも、天ケ瀬の命令通りに震える指で服のボタンを外していく。最後のボタンを外してシャツを脱いだら、ぐるりとうつぶせにひっくり返されてまだ脱ぎ掛けで中途半端に腕に残ったシャツで後ろ手を拘束された。

「なん…っ、、う、あああ!」

ジーンズが引きずり降ろされ、外気にさらされた臀部の中心に温かいものが当たり、それが天ケ瀬のペニスだと気付いた時には、天ケ瀬は慣らしもせずに俺の中に突きこんできたのだ。

めりめり、と身が裂かれるような感覚に体に不自然に力が入り、額に脂汗がにじむ。一向に力の抜けない俺の後孔に中々思う様に進まないことにいら立ったのか天ケ瀬がばしん!と俺の尻を強く叩いた。

「ひ、」
「オラ、何締めてやがんだ、入らねえだろうが!何のための穴だよ、ちゃんとしろ!」

ばしん!と再び尻を張られ、ぎゅっと閉じた目から涙があふれる。それでも天ケ瀬の言うとおりにしないと、と必死に息を整えてなんとか力を抜くと上から忌々しげに舌打ちが聞こえ、次には激しいゆさぶりが始まった。

「くそ…っ、くそ…!」
「ん、んあ、あ、ぐ…っ!」

恐らく少し切れているんだろうか、出し入れの度にぴりぴりと痛みが走る。天ケ瀬はどこか苦しそうに呟きながらも俺を蹂躙する。

ああ、気持ちよくないのかな。感覚がなくてちゃんと締めれてるかわかんないもんな。

ちらりと振り返って見た天ケ瀬は、涙に滲んでよくは見えなかったけれど、ひどく苦々しい顔をしているような気がして、小さく『ごめんなさい』と呟いた。

「なにが…!何に対して謝ってんだよ!何なんだよ、お前…っ!くそ、俺は…っ!くそお…っ!」

自由にならない体をぎゅう、と強く抱きしめられ、奥に熱い飛沫を感じたと同時に、俺は意識を失った。


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