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3

夜中、痛む腰をさすりながら起き上がり時間を確認する。

あのままソファで抱かれ、寝室に移動して抱かれ、結構な回数を求められた。最後の方はもうほとんど意識がなくて気を付けていたけどやっぱり気を失ってしまったらしく、時刻を確認すると夜中の二時だった。

となりを見ると、天ケ瀬が眠っておりひやりと背中が冷たくなる。なんてことだ、天ケ瀬と一緒にほんのわずかとはいえ同じベッドで眠ってしまうなんて。

急いで帰らなければ、と体をそっと起こして違和感に気付く。

ベタベタと嫌な感触は一切なく、おなかにも何も違和感がない。

…天ケ瀬が、後処理をしてくれた…?

まさか、と思いつつも綺麗にされている自分の体をそっと撫でる。夢かもしれない。ただの気まぐれかも。気を失ってしまったから、ベッドにそのまま入れておくには自分も気持ち悪いから。
でも。

それなら…リビングか寝室の床に放り出してしまえばいいのに、それをしなかった。

今こうして触れる自分の体が汚れていないことに、喜びのあまりに涙が出そうになった。


「何してんだ」


ふいに後ろから低い寝起きの声が聞こえて、振り向くと先ほどまで背中を向けていたはずの天ケ瀬が目を半分閉じながらこちらを向いていた。

「あ、あの、帰ろうかと…」
「…誰か待ってるのか」

ふるふる、と首を振る。俺を待っている人なんて、いるわけない。

「なら、明日にしろ」
「あ」

ぐいと腕を引かれ、ベッドに倒れ込むと天ケ瀬はまた眠りについてしまった。天ケ瀬の命令は、今まで聞いたことのない…初めての物だった。

傍にいてもいいと。

朝まで、隣で眠れと命令された。

そっと布団をめくり、ベッドに潜り込む。すぐ隣でこちらを向いて目を閉じている天ケ瀬の無防備な初めての寝顔に、涙をこらえるのに必死だった。


その日から、天ケ瀬は俺を抱いた後には必ず朝まで一緒に眠ることを命令するようになった。それだけじゃない。
今までは無表情に冷たい目しか向けられなかったのが、ほんの少し柔らかい光を帯びているように見えるのだ。あいかわらず、俺の事は家政婦のような奴隷のような扱いはするけれども。
浮気も、やめないけれども。


それでも、一緒にいる時間が長くなったり、時に天ケ瀬の機嫌がいいときには一緒にご飯まで食べる事を許してくれる。
そんなほんの些細な幸せに浸りながら、いつかこの幸せに終わりが来ることを考えて怯えていた。

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