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13 涼介side

「は…?…え?」

意味が分からなくてぽかんと間抜けな顔で目を白黒させている俺に、頭を上げた翔が微笑みをむけた。


いつも向けられていた、あの愛情に溢れた熱く優しい眼差しがそこにはあった。


「…ごめんな、涼介。俺はお前を試した。」


試したって、なに…?
眉を下げ、申し訳なさそうにぽつりと謝罪をする翔に首を傾げる。


「お前に浮気をされている間、俺は本当に辛かった。悲しくて、苦しくて。あの、お前の誕生日の日。とどめを刺された俺は本気でお前と終わりにしたかった。
好きな気持ちよりもお前に対する憎しみの方が強かった。
…でも、理由を聞いて。腹が立って、悔しくて。それでも、お前をほんとはまだ好きだったんだ。」


翔が、正座をした膝の上でぎゅっと拳を握りしめている。
ああ、だめだよ翔。そんなに強く握ったら、傷が付いちゃうよ。
握りすぎて白くなるその手を撫でてやりたくなる。


「お前に別れたくないって言われても、信じられなかった。お前は二度としないって言ったけど、俺はそこでよりを戻してまた同じ事をされたら今度こそ立ち直れる自信がなかったんだ。
それに、信じられないからきっと些細なことでお前を疑う。責める。…好きなのに、そんな醜い心でしかお前を見れなくなるのは嫌だったんだ」


辛そうに眉を寄せ俯く翔に伸ばしそうになる手を必死に押さえる。
翔、違うよ。自分が悪いみたいに言わないで。俺がまいた種だから。翔は何も悪くない。
ごめんな、翔。俺の身勝手な行動で、お前が自分を醜いと思わせてしまうほど狂わせてしまって。

翔はぐっと一度目を閉じると、何かを吹っ切ったかのように強い意志を携えた眼差しを俺に向けた。


「…だから、俺は賭けをした。けじめとして、お前と別れる。
それで、お前が浮気をしたのと同じ日数。俺が辛かった同じだけの時間が経っても、お前が俺を好きでいてくれたら。
もう一度、お前に告白しよう。お前が好きだって、また恋人にしてほしいってお願いしようって。」


ふ、と微笑んで俺を見つめながら言われたその言葉を、俺は上手く処理できなくて。

ただただじっと目を見開いて翔を見つめた。


「…なあ、涼介。どんな気分だった?俺がお前以外と出掛ける時、平気だった?なんとも思わなかった?」
「…へい、きなんかじゃなかった…。辛くて、悲しくて…、気が狂いそうだった…」


ぎゅっと胸を押さえながら、小さな声で呟く。


「俺、悔しかった。どれだけ言葉で訴えた所で、それがどれほど辛いものだったかなんて伝わるかどうかなんてわからない。
俺は酷い男なんだよ、涼介。あの時、お前が好きだって言ってくれたのが本気なら、同じ事をしたら少しでも同じ思いを味わってくれるだろうかって思ってたんだ。
…ほんとはお前が浮気をしたのと同じ半年、ただの同室者でいるつもりだったんだけど、俺がお前以外を優先するたびに見せるお前の顔に俺の方が耐えられなくなっちまった。」

翔はポケットに手をやり、何か小さな包み紙を取り出した。

「…なあ、涼介。俺は自惚れてもいいかな?3ヶ月、お前は俺を好きでいてくれたって。
仕返しみたいなひどいことした俺を、ずっと思ってくれていたって今度こそ信じていいかなあ?」

翔の言葉に、俺は無言で何度も何度も頷く。


「好きだよ、涼介。別れてもほんとはずっとお前が好きだった。
…もしお前が許してくれるなら。こんな酷い仕打ちをした俺を受け入れてくれるなら。…もう一度、やり直したい。俺と、付き合ってください。」


そう言って、翔はポケットから出した小さな包みを両手で俺に差しだし頭を下げた。

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