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10

その後、生徒会室に連れられて戻った穂高の前に、件の事件を起こした親衛隊員たちが並んで待っていた。皆一様に目を真っ赤にはらして、ぼたぼたと拭いもせずに涙を落としていた。

「たいちょう、ごめんなさい…!ごめんなさい〜…!」

『穂高の指示でやった』と証言したのは、自分たちの身がかわいかったから。制裁をしたことがばれれば、停学になる。でも、会長に溺愛されている穂高ならそこまでひどい扱いにはならないのではないかと考えたからだと。そして、穂高の性格をよく知る隊員たちは、穂高なら許してくれるのではないかと思っていたそうだ。

隊員一人一人に辞任の挨拶をしていると耳にした時に、初めて自分たちの罪を自覚した。穂高は自覚がなかっただろうが、そうすることで穂高が隊長ではなく一般生徒になった事がいち早く全校生徒に知られる。つまり、親衛隊という後ろ盾がなくなった穂高を襲おうと言う輩がいつ出てきてもおかしくはない状況だったのだ。広い校内、穂高がどこにいるかもわからない。もし、穂高の身に何か起こってしまったら。
怖くなって、穂高の行方を探す金浦に皆揃って自分たちの罪を打ち明け、すぐに校内に穂高の辞任はないと伝令をして予防線を張ったのだが、その間に書記に襲われていたのだ。

「で、できあいって、」
「あれ〜?ほだちゃん、気付いてなかったの〜?まあしょうがないっか〜、ほだちゃんは会長に食いつくのに必死だったもんね〜。あのね、ほだちゃんに意地悪なこと言って、ほだちゃんが喰ってかかってくるのを見てる時の会長、すっごく目じり下がってたんだよ〜!もうね、『ほだちゃんがかわいくて仕方ありません』って感じのでろでろの締まりのない顔してたの〜」

金浦の言葉に、ちらりと横に立つ広夢を見ると金浦が言ったようにそこには目を細め、とろけるように甘い微笑みを自分に向ける広夢がいた。そんな広夢を見て、穂高の顔がみるみるうちに真っ赤に染まる。

どうしよう。嬉しい。

じわじわと胸が熱くなって、広夢に先ほどのように抱きつきたくて仕方がなくなる。でも、長年取ってきていた自分の態度をいきなり変えることもできなくて、一人もだもだと悩んでいると広夢が自分に向かって両腕を大きく広げた。

「ん。」
「…?かいちょ?」
「おら、うだうだしてねえでとっとと抱きついて来い」

まるで穂高の心の中を読んだかのような広夢の言葉に穂高の顔が一層赤く染まる。

「べ、べつに、ぎゅってしてほしいなんて、思ってないもん!」
「俺がしてえんだよ。だからつべこべ言わずにとっとと来い」

ぐい、と腕を引かれてぼすんと広夢の胸の中に閉じ込められる。そんな風に言われて、まんまと胸をときめかせた自分が悔しい。
ぎゅうぎゅう抱きしめられ、おずおずと穂高が広夢の制服をきゅ、と握りしめる。

「か、かいちょの、たらし…」
「お前限定な」

役員たちや、隊員たちがいる前で隠しもせずにでれた顔を見せる広夢に金浦はうげえ、と吐き真似をした。



書記は自ら役員を辞退した。全校生徒の前できちんと今までの自分の態度をわび、頭を下げる書記の傍らには親衛隊長が優しく微笑んで寄り添っていた。

二人は辞退の挨拶の前に、図書委員の制裁対象となった生徒へも謝罪へ行った。床に手をつき土下座をする書記とその隊長に、その態度が嘘ではないと信じた図書委員の生徒はその謝罪を受け入れた。復帰後、正式に生徒会書記の席に着くことになっている。制裁を行った生徒たちは皆一週間の停学処分。書記の隊長は自ら退学を申し出たが、広夢がそれを許さなかった。いわく、

『学園に残って元書記をきちんと支えて一人前にすることと、元書記の親衛隊を責任を持って統率し今度こそ正しい親衛隊として活動して学園のために尽力することが、何よりの処罰』

だそうだ。

揃って穂高を責め立てた役員たちも、穂高に対して謝罪をした。だが、糾弾されひどい言葉を投げかけられたことがトラウマとなっているのか声をかけるたびびくりとして怯えたような目を向ける穂高の姿に罪悪感と自己嫌悪に悩まされる日々だ。そんな穂高に少しでも心を開いてもらおうとお菓子などをあげては広夢に怒られている。



「会長!お仕事してください!」

書類を手にして、バン!と広夢の机に叩きつける穂高から素知らぬ顔で視線をそらす。そんな広夢の態度に穂高は顔を真っ赤にしてぷりぷりと怒っているが広夢はわざとらしく穂高の目の前で書類をひらひらと振った。

「んなに目くじら立てなくてもその気になれば一瞬で終わるんだよ。俺は優秀だからな」
「うそばっかり!」
「嘘じゃねえよ。じゃあ試してみるか?俺がこの仕事を30分以内に終わらせたら、お前から俺にキスしろよ」
「なっ…、」

にやり、と穂高に向かって笑うその顔が意地悪で、穂高は真っ赤になって顔を俯かせる。

なんで、お仕事とキスは関係ないじゃん!

そう口にしたくても『キス』という単語が恥ずかしすぎて口にできない。そんな穂高をさも楽しそうに見つめる広夢はもうひと押し、とばかりに口を開いた。

「まあ、お前からなんて無理かもなあ?俺はキスぐらい簡単にできるけど、お前はお子ちゃまだもんなあ?」
「で、できるもん!」
「まあまあ、無理すんなって。」
「できるってば!自分からでしょ!やってやるもん!」
「ほんとだな?」

にやり、とあくどい顔をして笑う広夢の顔を見て、穂高はしまった、と口を押える。

「自分からできるんだな?俺にキス」
「っ、そ、そのかわり30分だからね!で、できるわけないとおもうけどっ!」

ムキになって言い返す穂高を見て、そのやり取りを見ていた役員たちがあ〜あ、とため息をつく。

ああ、また乗せられた。

恋人同士になった今も、穂高と広夢の関係はあまり変わらない。広夢が穂高をからかい、穂高が意地になって口車に乗せられる。

ただ、その内容が砂を吐くほど甘い恋人同士のやり取りになったくらいか。

「しょうがないよね〜。だって会長ってばほだちゃんを傍に置くために友達の俺にさりげなく親衛隊に入るようにすすめさせたんだし、ほだちゃんを一番傍に置きたいがためにわざと煽って隊長を引き受けさせたんだもんね〜。」
「っ、てめえ!」


同じように生徒会室で手伝いをしていた金浦がへらりと笑ってそう言うと、今度は広夢が真っ赤になった。

それを聞いていた穂高も、負けないぐらいに顔を赤くする。


「…、や、約束だから、ちゃんと僕からきすするもん。約束だから、しょうがなくだからね!さ、30分をちょっとでも過ぎたらできないんだからね!」

広夢が一瞬目を見開いてから口角を緩める。目を細めて締まりのないその顔に部屋にいる穂高以外の皆はぽかんと口を開けるほどだ。



「絶対に終わらせてやるよ。俺を誰だと思ってんだ?」



キスしたいから、終わらせて。


『やらない』ではなく『できない』と言った意地っ張りな穂高の、精いっぱいの言葉の裏に隠された真実。

どんなに意地を張ったって、穂高は広夢の手の上で転がされるのだ。



そして約束通り、30分以内に異例のスピードで仕事を終わらせた広夢が、皆の見ている前で約束通りにキスをしてきた穂高をがっしりと押さえこんでそのままディープキスをかまし、涙目になった穂高に背負い投げをされるのだった。


end

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