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2

「…あの花、見て下さい。」
「…?」

拳を握りしめ、唇をかみ俯く君島に宗徳が花壇のある一点を指差した。
宗徳の指す指先をたどると、そこにはチューリップが咲いていた。

「あいつらね、つぼみの時に荒らされたんです。俺が世話をしにきたときには、土から引っこ抜かれたり踏み倒されたり、ひどいもんでした。」

宗徳はゆっくりと立ち上がり、チューリップの咲く花壇へ向かいその花たちの前に移動してしゃがみこむ。そして、愛おしそうにそっと一輪の花弁に触れた。

「でもね、見て下さい。こいつら、そんな辛い目にあっても、負けなかったんです。荒らされた花壇を直して、肥料をやって、水をやって、頑張れ頑張れって応援しました。こいつらもきっと、負けるもんかって思ったんだと思うんです。こんなにきれいな花を咲かせてくれた」

そう言ってから、君島の元へ戻りその握りしめた拳にそっと手を添える。宗徳の行動に君島は驚いて体をすくませた。

「俺が、あんたの肥料になります。あんたがいつか、あいつ等に負けないくらいきれいな花をまた咲かせることができるように。」

優しく微笑みながら自分を見る宗徳に、君島は怪訝な顔をした。

「…弱っているところにつけこんで、みたいに思うかもしれませんね。事実そうです。おれ、あんたに憧れてたから。でも、だからといってあんたとどうこうなりたいってわけじゃない。ただ、あんたと仲良くなりたかった。だから、あんたも俺を利用してください。一人でいるのは辛いでしょう?あんたがいつかまた好きな人ができて幸せになれるまで、花を咲かすことができるまで、そばにいますよ」


この人に、泣き顔なんて似合わない。ずっと、ずっといつものように尊大で自信にあふれた顔をしていてほしい。


そのためなら、自分は喜んでこの人のための土になろう。


君島は、優しく微笑む宗徳の手を無言で握り返した。

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