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1

美形×美形です。苦手な方はご注意ください。



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「もういいわ、」


そう言って去っていく背中を追えなかったのは、俺の小さな意地のせい。



「はあ〜…」
「なんだよ満、せっかくのクリスマスなのに辛気臭いため息ついちゃって〜」
「うっせ…」

机に突っ伏してさっきからずっとため息をつく俺、近藤満(こんどうみつる)の横でそんな俺を面白そうににやにや笑いながら声をかけてくるのは同じクラスの友達の水田だ。
いつもなら同じように笑ってバカやって、ってやり取りするんだけど今はそんな気分になれそうもない。

というのも、原因は

「どうしたんだよ。いつも通り彼氏とバカップルするんじゃないの〜?」
「…うっせ…」

今こいつが口にした禁句。俺の彼氏、富沢達郎(とみざわたつろう)のせいだ。


俺と富沢は、この男子校に通う同級生だ。高校に入って初めて知り合った。自慢じゃないが俺は甘めの顔立ちで結構モテる。元々バイで、女も男もイケる俺はこの男子校でモテ男の部類に入り結構色んな子とお付き合いしてた。ただし、タチ専門で。

そんな俺よりも、もっとモテるやつがいるってんで気になって見に行ったクラスにいたのが、達郎。達郎は俺とはまた違ったタイプの美形で、冷たい感じのする男前だ。見に行った先の達郎のクラスに、俺の友達がいてたまたまそいつが達郎と友達で。そっから普通にダチとして遊ぶようになって、気が付けば達郎は俺の一番大事なところに住みついていた。

かる〜く、重くならない様に『俺おまえ好きだわ〜』なんて言ったら、『へえ、奇遇だな。俺もお前が好きだぜ』なんて返事が返ってきた。またまた〜なんて動揺を隠しながらへらって笑ってあいつを見ると、そこにはいつになく真剣な顔をしたあいつがいて、柄にもなく俺は頬染めて『嬉しい』なんて言っちまったんだよな。

それから、まあ順調にお付き合いしてたんだ。達郎はちょっとわがままで俺様っポイけど、なんだかんだ俺たちは上手くいってた。

そう。昨日という日が来なければ。

達郎と付き合い始めて半年がたった昨日、世間一般でいわゆるクリスマスイブ。この日俺は達郎とキメルつもりで意気揚々と一人暮らしの達郎の家に行った。普通に会話して、飯食って、ソファに二人で腰かけて。なんとなくいい雰囲気。どちらからともなく顔を寄せ合って…。

そこまではよかった。その後に、俺がソファに押し倒されるまでは。

実は、俺にはネコの経験はない。バリタチだったんだ。そんで、それは達郎も一緒みたいだった。俺は焦って、達郎の下から這い出て必死に待ったをかける。達郎は達郎で俺を必死に押し倒そうとする。そっから、なんで俺が下だって決めつけてんだ、見たいな口論が始まって。あまりにも嫌がる俺に、達郎が静かにブチ切れた。

『俺はおまえを抱きたいんだよ!』
『は!?なんだそれ!勝手に決めんな!そんなら俺だって!』
『いいからてめえは大人しく俺に抱かれてりゃいいんだよ!』

その一言で俺もブチ切れて、絶対に嫌だ!って怒鳴ったんだよ。そしたら、達郎は心底うんざりした顔をして、冒頭のセリフを吐いて部屋を出て行った。
家主のいなくなった部屋にぽつんと残された俺は、そのままそこにいることもできずにカバンを掴んで部屋を出た。扉を閉める前に二人で買ったケーキがテーブルの上に乗っているのを見てじわりと瞼が熱くなった。

それから、俺は達郎と一切連絡を取ってない。向こうも俺に連絡してこない。同じ学校だって言うのにすれ違いもしないから達郎は俺を避けてるんだろうな。

せっかくの恋人同士のクリスマス、俺が折れてりゃよかったのかな。

でもでも、達郎だって悪いんだ!…俺は、タチしかやったことなかったけど、達郎ならって思ってたのに。でも、やっぱいざ本番ってなるとすっげ怖くて。今までネコやってた子たちに土下座して回りたくなったよ、うん。

そんな俺の覚悟が決まる前に、ってか初めてな俺をできればもっと優しく扱って欲しかったのに。売り言葉に買い言葉で言われた一言は、どうしても許せなかった。

じゃあお前は俺のためにネコできんのかよって。

…それでも、やっぱ達郎が好きだから。もう一回、ちゃんと会って話したい。

何度目になるかわからない溜息を吐いて俺は、隣りの友人をほっぽってまた机に突っ伏した。

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