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6

絶対に帰ってきてくれると思ってたんだ。それだけは確信があった。

「健吾さん、お疲れ様。ご飯にする?お風呂にする?」
「…」

俺の後ろのテーブルの上を見て、すごく驚いた顔をしている。無言で部屋に入るとテーブルの前に立ち、じっと出来上がった料理を見つめる。それから、ぐるりと部屋の中を見渡して俺の方へ向き直った。

「…これ、全部、お前がしたのか?」
「うん。…ねえ、健吾さん。ちゃんと話したい。だから、聞いてくれる?」

俺のお願いにこくんと頷く健吾さんの前に立ち、俺は体を90度に曲げて頭を下げた。

「――――ごめん。ごめんなさい、健吾さん。」

俺の謝罪に、ぐっと息をのんだ気配がしてゆっくりと頭を上げる。真正面から見つめる健吾さんは、困惑したような顔をしていた。

「昨日、あんなとこ見せちゃったけど、今そんなこと聞いても信用できないかもしれないけど、聞いてほしい。あの子とは本当に何でもないんだ。飲み会で俺、飲みすぎちゃってふらふらんなって、情けないけど記憶が飛ぶくらい飲んじゃって。あの子が連れて帰ってきてくれたんだよ。
…その時にね、俺、自分が抱えてた不満をつい口に出しちゃったんだ。」

健吾さんは俺の話をただただ静かに聞いていてくれた。でも、ちらりと見たその手が白くなるくらいに握られている。
俺が最後に言った『不満』ってところに、一番反応したんだろう。握る拳がカタカタ震えているのがわかる。

「正直に言うとね、俺、健吾さんが、もうちょっと可愛らしく恥じらってくれたりしたらなあって思ってた。だって、健吾さんはえっちの時も、普段でも、なんでも俺より余裕でこなして。俺が旦那なのになあって思ってた。」

俺が発した不満だと思っていた事柄を聞いた健吾さんは眉を下げて俯いた。多分、俺は今の言葉で健吾さんをひどく傷つけただろう。健吾さんを傷つけた自覚はある。でも、俺の勝手な思い込みを聞いてもらわないとちゃんと謝ることなんてできないから。
俯く健吾さんの手を、そっと掴む。その手を取って、健吾さんの前に跪くと健吾さんは余計に困惑した目を俺に向けた。

「でも、違うんだよね。余裕でしてたわけじゃないんだよね。…健吾さんが、そうしてくれていたのは、俺の嫁だから。俺のために、必死になって色んなことを考えて、俺の為に色んなことをしてくれてたんだよね。」

谷崎が話した彼女とののろけ話は、俺のバカな頭を思い切り打ってくれた。他の誰の為でもない。好きな人の為だからできる事。

健吾さんは元々ノンケだ。しかも、男一人でずっと生きてきた。俺みたいにバイでもない普通の男が、何とも思わない相手にそこまでできるかと聞かれたらNOだ。俺は、大事なことを見失ってた。

やってもらうばかりで、何を返せていただろうか。やってもらうのが、当たり前みたいになっていた。それに慣れて、そうすることがどれほど大変な事かを考えることも理解することもしないで。
俺はバカだ。健吾さんがどうしてそこまでしてくれるのかをちゃんと考えることができてなかった。自分がどれほどぬくぬくと甘やかしてもらえているかを、受ける恩恵をきちんと感謝していなかった。

「ごめん、健吾さん。俺、旦那失格だ。やってもらうことが当たり前になって、嫁が誰のために一生懸命になってくれるかを忘れてた。…一番、忘れちゃいけないことなのにね。本当に、ごめんなさい。」

両手で、包むように健吾さんの手をそっと握ると健吾さんが少し力を入れて握り返してくれる。

「…俺、は…、男だからよ…」
「うん」
「なんつーか…、やっぱ、かわいい仕草なんてできねえし…」
「うん」
「昨日、さ、お前があの子と抱き合ってんの見て…、やっぱ女にゃなれねえな…、敵わねえよなって…」

ぽつぽつとこぼす言葉が、俺の心にこつんこつんと溜まっていく。初めてこぼす健吾さんの弱音。不謹慎だけど、その言葉一つ一つが、俺をどれだけ好きかって気持ちが溢れているようで。

そこまで言うと、健吾さんは一度唇を噛みしめて、まるで何かを決意したかのように俺の手を強く握った。

「そんでもさ。俺は、お前の嫁だから。昨日は悔しくて辛くって、頭冷やしたくて出てったけど。逃げてんじゃ、話にならねえから…。なら。嫁らしく、堂々と旦那の浮気を問い詰めてやろうって思ったんだよ。そんで、もし浮気だったなら。その理由が『出来心』だってんなら、ぶん殴って当分閉めだしてやろうって。そんで、『やっぱああいうことすんのは女がいいから』って理由だったんなら、三行半突きつけてやるつもりだったんだよ。」

ぐっと、今までで一番強いまなざしで俺を見つめる。先ほどの弱音なんて微塵も見えない、強い意志を持った眼差し。
でも、その奥には俺に対する愛しいって気持ちが溢れてる。

「いいか、一度しか言わねえからよく聞け。俺ぁな、男だから女みてぇなかわいい仕草なんざできねえ。そんでも、あんなカッコが出来んのは、お前だからだ。今回ちゃんと帰ってきたのは、夫婦だからだ。飯も、風呂も、あんなカッコも、毎日の仕事も、洗濯も、全部全部旦那の為だからできんだよ。」

女の子みたいに、可愛らしいわけでもない。しおらしいわけでもない、無骨な男らしいストレートな言葉。それでも、俺にとってはなによりも愛しい、愛にあふれた言葉。

そうだよ。俺、何を見てたんだ。

俺が、初めにこの人を欲しいと思った、この人に惚れたきっかけ。

「俺も、女がいいわけじゃない。健吾さんだから。健吾さんが、欲しかったんだ。だから…」

ほんのちょっと恥じらったりとか、可愛らしくしてほしいとか、そんなのは俺のちっぽけなプライドだ。男としてもパートナーとしても負けてる俺は、どこかで健吾さんに
『さすが俺の旦那さまだな』
って、認めてもらいたかったんだ。

「俺、頑張るよ。健吾さんに想ってもらえるのにふさわしい、もっとしっかりした旦那様になる。だから…、俺と、夫婦でいてください。」

王子様が姫にするように、跪いて握った手にキスをする。顔を上げると、健吾さんがにっと笑って、

「いたあ!」

俺の頭に、拳骨を落とした。

「しょうがねえから、それで許してやるよ。こい」

そう言って、今度は俺の腕を引いて隣の部屋の布団にぽいっと投げた。
倒れ込んで体を健吾さんの方に向けると、健吾さんは俺の上に跨って服を脱ぎ始めた。

「け、健吾さん?」
「飯は後だ。とりあえず、俺のここにお前を食わせろ」

全て脱ぎ棄てて、くるりと逆を向いて俺の目の前で自分の尻たぶを割開いてぐいと広げる。
全部が丸見えになるその状態で、俺の息子が反応しないわけなんてない。一気に天を向いたそれに満足そうに笑って、ジッパーを下ろすと取り出しておもむろに愛撫し始めた。

「けんごさ…っ、」
「旦那をよそ見しねえように、しっかり自信を持てるように教育すんのも、嫁の役目だからな。」

はむ、と息子を咥えられてのけぞる。ふと前を見ると、ムチムチのお尻が揺れて、あまりに扇情的な光景に思わず尻たぶをわしづかんでねっとりと揉みあげた。

「ん…、」
「健吾さん、健吾さん…!」

揉むたびに緩く開閉する穴に、息が荒くなる。少し顔を起こしてむしゃぶりついて舐めあげると、俺の息子を咥えていた健吾さんがその衝撃にちゅぽんと俺の息子を口から離してしまった。

「ん、あ、あ」
「健吾さん、きもちい?」

ちろちろとくすぐるように舐めたり、舌全体で穴を塞ぐようにして舐めたり、あなのまわりをくるくるとなぞったり。
健吾さんはびくびくと体を跳ねさせて、俺の息子を咥えようと必死になるけれど快感のために上手くできなくて赤い舌を一生懸命伸ばしてちろちろと舐めるのが精いっぱいみたいだ。

健吾さんを、俺が感じさせている。健吾さんが、俺を気持ちよくさせようと必死になってる。

いつもはリードを取られているような気がしていたえっちも、ちょっと視点を変えてみるとそんなに自分のために必死になっている健吾さんがかわいくて仕方がない。

「健吾さん…、健吾さん…!」

もっともっと感じさせたくて、さらに激しく舌で穴をいじるととうとう健吾さんは崩れ落ちて俺の息子に手を添えて震えながら擦るだけで精一杯になっていた。

「かい、せ…っ、」

真っ赤な顔で、震えながら後ろを振り向くその姿にまた欲情する。

「…、お前、だけだから…、っ、こんなん見せんの、おまえだけ…」
「…っ健吾さん!」

潤んでとろけた目でそんなことを言われて、俺はぐるんと体制を入れ替えて健吾さんに思い切り口づけた。

「健吾さん、かわいい…!」
「ば、っかやろ、かわいいのは、てめえだろうが…」

ふにゃりと微笑まれて、たまらず抱きしめた。

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