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3

「らからね、俺はね、こう甘い雰囲気ちゅうかそういうね…」

誰が声をかけたのか飲み会は結構な人数になっていた。他の学部のやつなんかも入り混じって、女の子なんかも結構いる。ただ気晴らしをしようと思って参加したのに意図せず合コンみたいな感じになって俺はさっさと帰ろうとしたんだけど『帰りたいなら飲め!』と結構な量のアルコールを飲まされてしまった。

今日は健吾さんも遅くなるって言ってたし、ちゃんと飲み会があるって伝えたって言う気の緩みとここ最近の葛藤もあって、俺はいつの間にかべろべろに酔っぱらってて、いつの間に来たのか俺の隣にはよその学部の女の子がいて気が付いたらその子に愚痴っていた。

「へえ、そうなんだ。海星くんって、すごくロマンチストなんだね。」
「そうなの。俺、ロマンチストなの。」

ぐい、とグラスを煽ると机に伏してぐすんと泣き真似をする。女の子はよしよしと俺の頭なんかを撫でてくれてなんだか慰められてるみたいでちょっと胸がきゅんとする。

「いってらっしゃいのキスとかね、お休みのちゅうとかね、スーパーからお手手つないで帰るとかね、料理中に後ろから抱きついたりね、そう言うのに憧れてるんだよね…。れも、れもさ、現実中々そうはいかないんらよね…」

料理中に抱きついたりなんかしちゃったら『邪魔だろうが』って怒られちゃう。スーパーなんか行っても力のある健吾さんは俺より大きな荷物を持ってさっさと歩いて行っちゃう。

俺が思う、甘い恋人たちの行動ってのがないんだよね。

もっとなんていうかさ。恥じらいって言うかさ。

かわいらしい健吾さんを見てみたい。

何杯目かのお酒を飲みながら健吾さんの事を考えると、なんかすげえ泣きそうになった。
悪酔いしたみたい。

「帰る…」
「送っていくよ、あぶないよ海星君。おうち、この近く?」
「うん…」

立ち上がった俺に、隣にいた女の子がなんか言ってたみたいだけどよく聞こえなくてわかんなくてふらふらと店を出る。寄りかかってるこれが電柱なのか人なのかよくわかんなくて、なんとか家にたどり着いた俺がおぼつかない手つきでドアの取っ手をひねると開かなかった。まだ健吾さん帰ってないんだ。

「鍵、これ?」
「うん…」

誰かがなんか言ってる気がしたけどよくわかんない。そうこうしてるうちに扉が開いて、ふらふらしながら部屋に入ってばたんキュー。


目が覚めて、目の前に裸エプロンをつけた女の子と作業着姿で玄関に突っ立ってる健吾さんに一気に酔いがさめた。

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