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1

年下×年上、美形大学生と無骨な三十路のおっさんです。


今回の攻めくん、かなりなよっとしてて情けないです。スカトロではありませんが下品な表現があります。
苦手な方はお読みになられないようお願いいたします。

注:若干の18禁要素が入ります。


ーーーーーーーーーーーーー

俺には、奥様がいます。

「ただいまあー」


好きで好きで、一年越しでやっと口説き落として付き合って、


「おかえり。ごはん?お風呂?それとも、」


お付き合いしてから約9か月経って、結婚前提にって半ば無理やり同棲してもらった、


「俺のケツか?」
「…っ健吾さあああん!」


無骨で、男らしい奥様です。



リビングのソファでタオルを顔に当てさめざめと泣く俺は、西河海星(にしわか かいせい)20才。大学生だ。茶色のさらさらな髪、アーモンド形の少したれ気味な大きな目、すっと通った鼻筋、薄い唇い身長185。いわゆるイケメンという部類に入る。

「何だ、何泣いてやがんだ。待ちきれなかったか?」

そして先ほどのやりとりで

『なんか違うけどとりあえずケツで…』

と言った俺に対して

『あいよ、待ってな。浣腸してクソ出して洗ってくっから』

と男らしい台詞を残し、今しがたトイレに行ってシャワーを浴びて素っ裸で出てきたこの人は荒木健吾(あらき けんご)さん。今年30才になった、大工さん。仕事で鍛えられたムッキムキな体、短めのセットもされてない髪、顔もちょっと強面な感じで何よりその性格というか態度が無骨でいかにも頑固な職人さん!といった感じ。

そんな俺たちの出会いは、俺たちが住んでいるアパート。サークルの飲み会に行った帰りに家の鍵をなくしたことに気付いて、部屋に入れなくてどうしようかと困っている所にスーパーの袋を持って現れたのが健吾さん。元々隣同士で挨拶なんかは交わしていたんだけど、俺は何となくこの健吾さんが苦手だった。ポケットなんかをパタパタしてるところを見られちゃって何だか恥ずかしくて軽く会釈をしたら、健吾さんが声をかけてきたんだ。

「鍵ねえのか」
「え?あ、はい。落としちゃったらしくて…」
「ふうん」

一言そう返すとがちゃがちゃと自分の部屋の鍵を開けてさっさと中に入ってしまった。まあ特に気にせず携帯を取り出し、今日は友人の家に泊めてもらおうかと思っていたらもう一度隣の部屋の扉が開いた。

「おい、こっちこい」
「え」
「いいから早く入れ、腹減ってんだ」

なんで俺があんたの腹事情を気にしてあんたの部屋に入らなきゃいけないんだと思ったけど、怖くてそんなことも言えるはずなく流されるように入ってしまった健吾さんの部屋。男の人にしては割と綺麗に整頓されていて意外だなあとちょっとびっくりした。促されて奥まで入ると、低いテーブルの上に鍋が。

「座っとけ」
「あ、はい…」

どうしようかな、と思ったけど言われるままにテーブルの前に座ると、しばらくして大きめのお皿に色んな食材を載せた健吾さんが現れた。おおざっぱにぽいぽいと鍋の中に放り込んで蓋をして、その間に俺の前と自分の前に取り分け椀と白ごはんの入った茶碗とお箸をおいていく。白ごはん、つやつやしてすげえうまそう。

しばらくしてふたが開けられて、いい具合に火の通った野菜やお肉たちにうわあ、と感嘆の声を上げた。
そんな俺の前に置いてある椀に、健吾さんはさっさと煮えた野菜やら肉やらを入れていく。だしをお玉で注いで、自分にも同じように入れた。

「食え。いただきます」
「え?あ…」
「いただきます。」
「…いただきます」

じろりと睨まれて慌てて箸を取り、手を合わせて合掌すると健吾さんはがぱがぱとご飯を食べ始めた。俺も、ちらりと健吾さんを見てから箸をつける。

めっちゃうまい。

え、鍋ってこんなうまかったっけ。そんくらい感動した。気が付くと俺は健吾さんに負けるとも劣らないくらいがつがつと目の前のご飯をがっついていた。

「ごちそうさん」
「ごちそうさまでした」

空っぽになった鍋に、最後雑炊までしてくれていっぱいになった腹をさすっていると健吾さんがテーブルの上をちゃっちゃか片付ける。手伝う間もなく片付けられたテーブルに、次はどん、とアイスが置かれた。デザートらしい。


蓋を開けてスプーンですくって、ちらりと健吾さんを見る。あーん、と大きく開けた口にアイスを放り込むと、健吾さんはめっちゃ幸せそうに目を細めた。

その顔見て、俺は自分の心臓がすっげえ跳ねたのが分かった。

「…あの」
「風呂入ってこい。」
「え」
「着替えは出しておいてやる。」

デザートも食べ終えて、これからどうしようかと考えていると健吾さんが顎で風呂場を指した。有無を言わさないその態度に風呂に向かう。湯船に浸かりながら俺はなんだかすげえ甘酸っぱい気持ちになっていた。
風呂から上がると、出されていたTシャツと短パンに着替える。部屋に戻るとテーブルが上げられて、なんと布団が敷かれていた。

「大家はもうあの時間じゃ寝てるから連絡しても無駄だ。明日朝一で連絡してやるから寝ろ」

そう言って風呂場に向かう健吾さんの背中をじっと見つめていた。健吾さんが風呂から上がって、部屋の電気を消して自分の布団にもぐりこむと健吾さんはすぐに寝息をたてて眠ってしまった。隣に敷かれた布団にもぐりこんで、眠る健吾さんをじっと見つめる。

ご飯、めっちゃおいしかった。風呂、気持ちよかった。

今日一連の、健吾さんに招き入れられてからを思い出すとどきどきする。

すげえ…。肝っ玉母さん。…ほしい、な。


この人が、ほしい。


俺はその一日で、ころっと健吾さんに落ちてしまったのだった。

元々バイだった俺は男同士ってのにも何ら抵抗はなかった。だけど、健吾さんはそうじゃなくてノーマルだった。それからの俺の猛アピールにも結構大人な感じで流されたりとかしてたけど、一年かけて口説き落とした。

『結婚してください!』

といった俺に対して、

『しょうがねえな。嫁になってやらぁ』

そう言って笑ってくれた時の健吾さんの顔を、俺は一生忘れない。

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