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カナリアが羽ばたく

「マヒロ、今日もお仕事なの…?」

枕を抱きしめ、しゅんとさみしそうに俯くエドの頭を撫でる。

「ごめんな。リビングでしてるから、ちゃんとエドの傍にはいるから。」
「マヒロ…」

なだめるように言うと、エドは一度だけ俺の名前を口にしてぐっと唇を噛みしめて俯いた。

「…おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。」

言いたい言葉を飲み込んで、寂しそうに背中を向けるエドが寝室に入り扉を閉めるのを確認して俺はソファに腰掛けふう、とため息をついた。



俺、野々宮真尋とエドワードは半年前に恋人になり同棲している。初めはとても幸せだった。毎日俺を待つエドのいる部屋に帰り、食事をし、ともに眠る。そんなささいな毎日が宝物の様で。


だが、しばらくすると俺に限界が来てしまった。


――――――エドを抱きたい。


愛しい人を目の前に、愛を交わしたいと思うようになった。それは、恋人なら抱いて当然の感情だろう。

だが、俺はエドにそれを言い出すことができなかった。

なぜなら、エドは初めて俺と出会ったとき、当時エドのいた施設の園長に強姦されて逃げてきたのだ。
同じ男に組み敷かれ、無理やり欲望をねじ込まれ、体だけでなくエドは心も傷つけられた。事実、恋人になってから一度研究室についてきたことがあったのだが、俺の同僚の男がにこやかに挨拶をしエドの肩に触れた瞬間、エドはパニックを起こし暴れ出して気を失ってしまったのだ。

目が覚めて自分のしたことに泣きながら謝罪するエドを見たときに、俺はエドの心の傷の深さを初めて知った。

エドは俺との生活でそんな状態に陥ったことがなかったからだ。


エドは俺のキスをとても幸せそうにはにかみながら受ける。元々甘えたなのだろう、エドは俺が家にいるときは片時も俺の傍を離れようとはせず、隙さえあれば抱きついてくる。

だからまさか、エドが男に触れられただけであんな風になるとは想像もつかなかったのだ。

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