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短く切りそろえた髪をいじりながら、エドが拗ねている。
「こんなボウズみたいな頭じゃ、マヒロに嫌われちゃう…」
翌日、アイロンの為に焦げてしまった髪をきちんとするために美容室に連れて行ったのだがどうやらボウズに近い髪形になった自分に自信がないらしく、しきりに鏡を見て髪を引っ張る。
野々宮はその様子がかわいらしくて、くすりと笑い後ろから抱きしめてつむじにキスを落とした。
「ばかだな、そんなくらいで嫌いになんかならないよ。言っただろ?俺はエドが好きなんだって。ボウズだろうが歯が抜けようがエドが大好きだよ。」
エドはその言葉に、嬉しそうに頬を染め野々宮に抱きついた。
思えば、初めて見たそのときから心惹かれていたのかもしれない。涙を流し、自分を見上げたエドに、ひどく心が揺れ動いた。助けた翌日、ここにいたいと言ったエドに、はっきりと断れなかったのも。出て行こうとしたエドを、無意識に引き留めたのも。
野々宮は、初めからエドに捕らわれていたのだ。
小鳥を捕まえることができたよ。
研究所で唐津に報告をすると、唐津はとても嬉しそうに祝福をしてくれた。
薬師寺を思うあの顔を見て切なくなったのは、自分も同じ思いを胸に秘めていたから。
唐津に、ここで会えてよかった。
唐津に出会わなければ、エドへの気持ちに気付くことはなかったかもしれない。
野々宮は心からそう思った。
今日もエドは、歌を歌いながら部屋をくるくると動き回る。
自分のためだけにその歌を奏でるカナリアを見つめながら、野々宮は幸せを噛みしめた。
end
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