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2

ちびこぐはすっかり俺に懐いてしまった。自室に帰った後もずっと俺の後をついて回り、
「かちゅらぱぱ」
と呼んでくる。俺は俺で、ちびこぐにそう呼ばれるたび鼻の下を伸ばしてでれでれだ。

「えほん読んれぇ」

今もそう言って、自分の持参した絵本を俺に渡してきた。膝の上に乗せてやり、読んでやる。

「鉄二、お風呂に入ろう」
「やっ!ぱちゃぱちゃちらい!」

風呂の用意をした小暮が言うと、ちびこぐはぷいっとそっぽを向いてしまった。風呂嫌いらしい。生徒会室で俺を無視していた小暮は、ちびこぐと戯れる俺を見て少し態度が軟化した。とはいえ、まだぎこちない。

「鉄二、じゃあ桂パパと入ろうか。」
「ぱぱと…」

うーん、と考えるちびこぐ。

「桂パパと入ったら、小暮がアイス用意してくれるってさ」
「はいる!てちゅ、ぱぱとはいるぅ」

アイスに釣られ、手を挙げたちびこぐを抱っこして風呂場に向かう。

「洗ったら呼ぶから、上げてやってくれ。」
「う、うん…」


小暮にそう言って風呂場に向かう間中、俺はにやけた顔を抑えるのが大変だった。
ちびこぐをきれいにしてやり、湯船に浸かって数を数える。

「おーい、上がるぞー」
「あ、はーい。ほら、鉄二おいで。」

俺の呼びかけに、小暮が返事をしバスタオルを持ってちびこぐを迎えにくる。ちびこぐをバスタオルでくるみ、抱き上げて洗面所から出て行く小暮。

「…ふ、夫婦…」

1人にやけた顔を湯船にちゃぷりとつけた。


風呂からあがったあと、みんなでご飯を食べる。

「にんじんちらい…」
「好き嫌いはだめだ、鉄二。ちゃんと食べなさい。」
「てちゅにぃ、めーよ!てちゅ、にんじんちらいもん!」


人参が苦手らしく、食べないことを小暮に注意されて喧嘩をしてる。
ちびこぐは自分のことを『てつ』、小暮のことを『てつ兄』と呼ぶ。
『つ』が言えなくて舌っ足らずなのがまたかわいい。

「ほら、鉄二。桂パパのお皿にいれな」
「あい」
「綾小路、甘やかしちゃだめだ!ちゃんと食べさせないと!」
「いいじゃん、今日くらい。ママは怖いなあ、鉄二。」
「こわいねー」


えへ、言っちゃった。ママって言っちゃった。俺のセリフに、小暮が真っ赤になった。


食べ終えた後、テレビを見ていたらちびこぐはこくりこくりとし始めた。

「眠いか?」
「ねんねしゅる…かちゅらパパぁ、だっこぉ」

腕を伸ばすちびこぐを抱き上げて、ベッドに寝かしてリビングに戻ると、小暮がコーヒーを淹れてくれた。

「お、ありがとう」
「こちらこそ。今日1日、大変だったろ。ごめんな、ずっと相手させて」
「いやあ、大したことないよ。でも子供ってかわいいよなあ、あんな懐いてくれてさ。パパなんて呼んでくれて」


小暮がママで俺がパパ。想像してにやけていると、小暮の様子がおかしいのに気がついた。

「どうした?」

そっと頬に手をやると、小暮は唇を噛み締めてぽろりと一粒の涙をこぼした。

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