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7

嬉しい、と泣き出したエドに、俺も涙をこぼした。

ああ、この子は何て大きな人間なのだろう。本当は、受け入れる瞬間恐ろしかったに違いない。過去の恐怖の為に、本当に受け入れられるかどうかとても恐ろしかったのだ。だが、エドは自分のためにその恐怖をひとかけらたりとも見せなかった。自分が、安心して事を進められるように。

エドはその小さな体で、自分の全てを包み込んでいてくれたのだ。


「愛してる。愛してるよ、エド…。俺もお前と繋がれて嬉しい。エド…、俺を受け入れてくれてありがとう」
「…っ、マヒ、ロ…っ、僕、ぼく…っ、うわあぁん…!」

俺の言葉に、エドはとうとうぼろぼろと涙をこぼして大声で泣いた。二人で、繋がったままに抱きしめあい泣き合った。


「エド、ほら、朝食を持ってきたよ。大丈夫か?起き上がれる?」

次の日の朝、俺は起き上がれないエドのために休みを取り甲斐甲斐しく世話を焼く。まるでお姫様のように扱われエドは真っ赤になって顔を伏せるのだが、そのたびに無理やり顔を上げさせては『かわいいかわいい』とキスをしてやる。

「ほら、あーん。」

今もベッドにクッションを幾つも置き、エドを優しく抱き上げ体を起こさせて運び込んだ朝食のスープを食べさせようとしているのだが、エドがなかなか口を開けてくれない。恥ずかしいらしい。

「マ、マヒロ、ぼく自分で食べられるよ…」
「だぁめ。今日一日、エドは何にもしなくていいの。全部全部、俺がするから。食べるのも、動くのも、トイレだって…」
「マ、マヒロ!」

さすがにそれは恥ずかしいからイヤだ、と真っ赤になって抗議するこの子が愛しくて仕方がない。

先ほど職場に電話をかけたら、スミスが出て散々からかわれた。だが、俺にはそんなからかいもただの祝福にしか感じない。

『ありがとう、スミス』

電話ごしに礼を言うと、スミスはお前の仕事分をしこたま残しといてやるからな、と笑いながら言った。


ベランダでいつもはエドがしている洗濯物をしていると後ろの寝室から小さな歌声が聞こえる。


しばらく聞くことのなかった久しぶりのその歌声は青く晴れ渡った空に響く。まるで、空に羽ばたくことのできたことを喜ぶかのように。

俺は愛しい自分だけのカナリアの歌を、いつまでも聞いていたいと微笑んだ。


end

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