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「エ…」
俺がエドの名を呼ぶよりも先に、エドは俺に飛びついた。そして、その小さな唇で俺の口を塞ぐ。
「ばかっ!マヒロの、バカ、バカバカ…っ!…っ、ぼく、僕だって…!ずっと、ずっとマヒロに抱かれたかったのに…!」
真っ赤になりながら自分を責めるエドを、恐る恐る抱きしめる。
「…いい、のか?だって、お前は、お前は…。…エド、俺は、確かにお前の全てが欲しい。だけど、俺はお前を屈服させた男と同じだ。もし、俺がお前を抱くことでお前がまたあの時のように恐ろしい思いを抱いてしまったらと…、取り返しのつかない傷を負ってしまったらと思うと、恐ろしくて手なんて出せなかったんだ…!」
「だから、僕を避けてたの…?そんなの、余計に傷つくよ!」
俺の告白にぴしゃりと言い返すエドに、ぐっと言葉に詰まる。エドは涙をこぼしながら、その青い目で俺を強く睨んでいた。
「勝手に僕が傷つくなんて決めないで!話してくれもしないで、何も言われずに避けられた方がよっぽど傷つくよ!僕、僕…っ、マヒロが、やっぱりカラツがいいんじゃないかって…!僕に手を出さないのは、僕に魅力がないからじゃないかって…!好きじゃなくなったんじゃないかって、すごくすごくこわかったんだからぁ…!うああああん!」
目の前でわんわんと泣き叫ぶエドに、スミスに言われたことが頭をよぎる。ああ、本当だ。俺は、自分だけのことしか考えていなかった。エドの為と言いながら、そうすることでエドがどんな不安を抱くことになるかも気付かないで。
我慢するだけが相手を想うことじゃない。自分の想いを言って、それから決めるべきことだったんだ。
恋人同士なのだから。
「…ごめんな、エド。俺が悪かった。不安にさせてごめん。エドが、好きだ。…好きだからこそ、抱きたい。お前が欲しい…」
優しく抱きしめながら耳元にキスをする俺に、エドはゆっくりと頷いた。
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