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3

そんな生活が1ヶ月ほど続いたある日、禁欲と葛藤にやつれ果てた俺を心配して同僚のスミスが飲みに行こうと誘ってきた。

正直そんな気分ではなかったのだが少しは気が紛れるかと誘いに乗ることにした。エドに、遅くなるので先に眠るようにと、鍵をかけるのを忘れないようにと連絡をする。

エドは少し寂しそうに
『あまり飲み過ぎないでね』
と言った。


その声に、ちくんと胸が痛む。



「なぁんだよぉ、ほんとお前最近シケた面してるよなあ。何かあったのか?」
「いや…、何でもないよ」

グラスのビールを一気にあおる。何だか鉛を飲み込んでいる気分だ。
ちらりと時計を見ると、午前0時に差し掛かるところだった。エドはもう寝ただろうか。

「はあ〜、お前、何でもないって飲み方じゃねえだろうが。さっきから時計ばっかり気にしてるし。最近思い詰めてるようだから少しは気晴らしになるかと誘ってみたんだけど、逆効果だったみたいだな。」

スミスがやれやれと肩をすくめる。

「いや…、家にあまりいたくないのは確かだから誘ってくれたのはありがたかったんだよ」
「うそつけ、顔に『早く帰って愛しのエドに会いたいよ〜』って書いてあるぞ。」

スミスの言葉に激しくむせる。そんな俺を見てひどく楽しそうに笑ったかと思うと俺にカバンを渡して無理やり席を立たせた。

「おいっ…」
「だめだめ、かわいいハニーがいる奴はとっとと帰れ。そんでちゅーしてイチャイチャしてやがれ。」

それができないからこれだけ苦しんでいると言うのに。


「マヒロ」


さっさと帰れと手で払う仕草をするスミスをじろりと睨んで仕方なく帰ろうとすると、スミスがいつになくまじめな声で俺を呼んだ。


「…言わないことが相手の為じゃない場合だってあるんだぞ。特に恋人同士の場合なら、自分だけ我慢すればいいなんてのは大間違いだ。
恋人ならな、誰だって相手のことを一番に考えて相手の為に何かしたいって思うもんだ」


スミスの言葉に俺は返事をせず、軽く手を挙げて店を後にした。

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