×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




3

俺を好きだと言ってからの幸人様はそれまでの態度が嘘のように変わっていった。
傲慢で尊大だった態度はすっかり影をひそめ、明るく社交的になり笑顔が増えた。
咲人様との関係もとてもよく、本来そうであった仲の良い兄弟に戻っていた。食事の時にも、よく二人で歓談をされたり、中庭のテラスでお茶をしながら話したりと以前までの険悪さなど微塵も感じられない。


そして、今まで付き合っていたセフレは全て切ったらしく、迎えに行くと満面の笑顔で俺に駆け寄る。

オナホールちゃんが俺に近寄ろうものなら嫉妬心を露わに俺に抱き着き離さない。ただこれはオナホールちゃんだけに限らず、滝沢に対しても行われるので滝沢はどう接するのが正解か未だにわからないらしく、特に恋愛沙汰の嫉妬など向けられたことがないために幸人様に嫉妬を向けられるたびにおろおろしている姿をよく黛にからかわれている。


そして俺に対しては、あくまで表向きは主人として。そして二人きりになるとかわいい恋人へと変わる。

他の使用人たちの前では、恋人であることを見せない様にしている。幸い、幸人様が俺を独占しようとしてもその破綻していた昔の性格が功を奏してという言い方はよくないが、俺に対して専属執事であるからという独占欲が出ているのだと思われている。

幸人様と二人で話し合って、滝沢と黛以外には俺たちの関係はバラさないと決めたのだ。
俺たちが付き合っていることを知ったら、富原さんなんて泡を吹いて倒れてしまうかもしれない。

時間はある。ゆっくりでいい。ゆっくり、自分たちが恋人であることを知ってもらっていこう。ずっとこの先二人一緒にいるために、焦らずにいこう。



そんな幸せな日々が続けばいいと願っていたが、それは叶うはずもなかった。



ある日の夜、部屋で着替えをしていると富原さんから屋敷内全ての執事に連絡が入った。

『直ちに食堂に来るように』

ひどく切羽詰ったその声に、嫌な予感を胸に抱きつつ食堂へと向かう。

「失礼いたします」

扉を開けて中に入ると、見知らぬ女が一人、椅子に座っていた。
そして、俺以外の執事たちが皆その女性の後ろに立って並んでいる。はて、俺はどこに並べばいいんだろう。
ちょっと立ち止まって考えていると、椅子に座った女の人が俺に声をかけた。

「あなたはそちらに座りなさい。
堂島正明さん、でしたね。初めまして。
私は榊原の女当主。幸人の母親です」

座る様に指示された椅子に腰を下ろしながら、目を見開いて目の前の女性を見た。

この人が。

女主人はとても美しい容姿をしている。
大学生の子供がいるようには見えないな。


そう思うと同時に、疑問が頭に浮かんでくる。


…なんで俺の名前を。


いや、それよりも。


なんで俺だけがこいつの前に。


[ 63/73 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

top