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僕は夢を見た。聡と、出会って過ごした日々の夢を。
あの頃僕は、片思いで苦しかったけど幸せだった。
『透』
聡が、笑いながら僕を呼ぶ。その声が大好きで。名前を呼ばれるだけで、幸せで。
夢を見ながら、泣いていた。
「…透」
ゆっくりと意識が浮上する。
目の前に、聡がいた。
「聡…?」
「おばさんが上げてくれて。今、買い物に行ってくるって。」
寝ている俺の横に腰掛け、優しく頭を撫でる聡。これも、夢かな…?
「…透、ごめんな…」
ああ、僕を気にして来てくれたんだ。悪いのは僕なのに。
「聡は、悪くないよ…、僕こそ、あんな言い方してごめんね。
体は、正直つらいけど…砂森くんには、もっと優しくしないとだめだよ。」
「違う」
僕がいうと、聡がすぐさま否定した。
「違うんだ。透。
…俺、やっとわかった。俺が好きなのは、お前なんだ」
聡の言葉に、思考回路が停止した。
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