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10

聡side


次の日、重い気持ちのまま登校すると透はまた欠席だと担任が言うのを聞いてほっとした。

と同時に、大丈夫だろうかと心配になった。
聞いただけの知識で、無理やりにことに及んだのだ。
その日一日、誰の話もぼんやりとしか聞けなかった。


「聡、話があるんだけど」


そう言って、放課後郁斗が俺を空き教室に連れ込んだ。誰もいない教室で二人きり。
いつもならドキドキするはずなのに、今日は郁斗のことですらちゃんと認識できない。


「…今日も品川、休みだったね。」


郁斗の口からでた透の名前に、大げさに体がビクついた。そんな俺を、郁斗がじっと見つめる。


「…話って?」


せっかく郁斗と二人きりなのに、早く帰りたくなって話を促す。

「ああ、うん。聡に品川の家教えてほしくって。2日も休みで心配だから、見舞いに行こうかなって。…実は俺、品川のこと好きなんだよね。」


郁斗の言葉に目を見開く。
郁斗が、透を、好き?



「だ、だめだ!」



思わず叫んだ。

「どうして?男同士だから?恋愛は自由だよね、俺が誰を好きになろうが勝手だと思うんだけど。」

郁斗の言葉に、ぐっと言葉がつまる。
でも、郁斗が、透を好きだなんて。
俺は。俺が。

「…だめだ。
俺、郁斗が、好きだから…」
「――――違うでしょ?」
咄嗟に出た告白を、郁斗が間髪入れずに否定した。
違うって、何が?


「はあ…、固定観念てのはやっかいだよね。捕らわれて、真実を曇らせる。
聡が俺をそういう目で見てるのは気付いてたよ。今まで結構あったからね。初めはそうなのかなって思ったんだけど。1ヶ月、一緒にいて違うって思った。
ふふ、今俺が品川を好きだって言ったときの自分の顔、わからないよね。」

郁斗が、クスクスと笑う。俺がどんな顔をしたって?
郁斗がすう、と笑いを消し真剣な表情になる。


「聡、君は俺を通して誰を見てたの?
俺を、誰の代わりにしてた?」



『聡』



俺を呼ぶ透の笑顔が浮かぶ。頭の霧が晴れたように、不思議な感覚が体に広がる。


「早く行きなよ。手遅れにならないうちにね」
「……ありがとう、郁斗」

俺は教室を飛び出した。


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