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聡side
透の部屋を後にし、家に帰った俺はひどく後悔していた。
親友を、強姦した。
あれは、完全なるただの暴力だ。
なぜあんなことをしたのか。
クラスの奴に話を聞いて、透の所に駆けつけた。透は、簡単に自分を安売りするような男じゃない。内気なようで、芯がしっかりしている。
じゃあ、なぜそんな男とホテル街にいたのか。
好き、だから。
そいつが、透の好きな奴だからじゃないのか。
透は、男と付き合ってたのか。だから、自分が郁斗を好きだと相談したとき、あんなに普通に答えることができたのか。
考えると同時に、どうして言ってくれなかったんだと腹が立った。
俺たち、親友じゃなかったのか。
俺だって、偏見なんて持たずに話を聞いてやれたのに。
真相を確かめたくて透を問いつめると、
『関係ない』『わからないことがあれば教えてやる』
と言われた。
その言葉を聞いて、心が酷く冷えるのがわかった。
そのまま、俺は透を…
すべてが終わった後、怖くて透の方は見れなかった。ふるえる手を隠して、制服を整え透の部屋を出る。
扉が閉まる直前、か細い透の謝罪の声が聞こえた。
明日、どんな顔をして透に会えばいいんだろう。これから、どうやって透と接していけばいいんだろう。
俺たちは、親友だったはずなのに。
答えは出ないまま、夜は更けていった。
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