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5

「ちょうどよかった。なあ、滝川さん。あんた、Mなんだろ?俺の犬になれよ。俺ならそいつと違ってなんでもあんたの望むプレイをしてやれるし、きちんと立派な犬に調教してやれるぜ。だから…」
「だまれ」

滝川先輩が、にやにや笑いながら話す長沢の言葉を聞いた事も無いような冷たい声で遮った。そのあまりの変貌ぶりに、目の前の長沢も少し怯んだようだ。

「な、なんだよ、その口のきき方!犬のくせに…」
「黙れ、と言ったんだ。俺は確かに犬だが、それは伸二限定だ。お前のような下種な輩に犬と呼ばれる筋合いはない。」
「なっ…!」

先輩の言葉に長沢が顔を真っ赤にして震える。「この俺が、犬ごときに…」とかなんとかぶつぶつ言っている。恐らくSとして、Mの人間に口応えをされたことがないんだろう。

「…まあ、いい。そんな口を利けるのも今のうちだ。しっかり躾直してやるから、俺の犬になれ。あんただって、こんな奴がご主人様なら満足なんてできないだろうが?単なる普通の人間に、俺たちが理解できるわけないし不満が溜まって他にご主人様が欲しくなるって、絶対。」

長沢の言葉に俺は唇を噛んで俯いた。…そうかもしれない。先輩は俺とセックスするとき、ほんとに優しくしてくれる。いつも変態なことばかり言って追い回しているくせに、本番でそれを強要することはないんだ。
でも、俺はそれで幸せで満足だけど先輩は?

やっぱり、きちんと自分の性癖を理解して、思うようなやり方をしてくれる人がよくなるんじゃないの…?

「…君は大きな誤解をしている。俺はただ自分の性欲を満たすためだけにSMをしようとは思わない。俺はね。伸二が好きなんだ。伸二を愛しているからこそのMなんだよ。
伸二がノーマルなのは知っている。そんな愛している伸二を抱くことができるなら別にそんなプレイなんて本番でしようとは思わない。プレイなんてなくてもね。愛してる人とのセックスは心から満たされるんだよ。」

先輩は、長沢の目をまっすぐに見つめ真剣な顔でそう言い切った。

ほんとに?ほんとなの?先輩。俺と、プレイできなくても、そのままの俺でいいって思ってくれてるの…?

じわり、と浮かぶ涙を滝川先輩が『伸二の涙!』と息を荒くしてべろりと舐めた。
…色んな意味で台無しだよ!!

「…なに、言ってんだ。そんなこと、あるわけない。あるはずがない!絶対、絶対、上手くいくはずなんてない!!男ってのはな、性欲が何よりも一番強いんだ!俺たちみたいな性癖を持った奴らは、それが満たされない限り上手くいくはずなんてない!愛してる人とだって、満たされるはずないんだ…!」

長沢は、必死になって叫んでいた。それはまるで、自分に言い聞かせるように。自分を無理やり納得させるかのように。
そんな長沢を見て、俺は何だかとても悲しくなった。…もしかして、長沢は。

長沢に手を伸ばそうとして、その手を滝川先輩に握りしめられる。

「…満たされるよ。俺が伸二を愛している限りね。それに」

かしゃん。

軽い金属音がしたかと思うと、先輩が握りしめていた俺の手にはいつの間にか手錠がかけられていた。


「…え?」
「知ってるかい?女王様だってSになるためにはMの勉強をするんだよ?つまり、俺は伸二が望まないならMではなくSにもなれるのさ」


……………どっちも望んでねえええええええぇ!!!!!

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