12
母が住んでいるところは意外にも和音様の住む町の一つ隣だった。和音様はここに母も住むように言ってくれたが、母はそれを丁重に断った。今住んでいるところに仕事もあるし、何より僕を助けられなかったのだから自分にはその資格はないと言った。その代り、許されるなら僕と会うことを許してもらえないかと言った。
和音様はそれを聞いて、僕にいつでも母に会いに行ってもいいと言ってくれたし母が僕に会いに来ることにもぜひにと頷いた。母にも仕事があるので、そんなにしょっちゅうは会えないけれども、二度と会えないと思っていた母にこれからはいつでも会えるのだとそれだけで僕はとても幸せだ。
それから、義祖父母は結局山本の親族全てどころか話を持ちかけたあの男にも見放されたそうで、その後どうなったのかは僕は知らない。
「あのクズ共がお前にした今までの仕打ちを考えればぬるいくらいだがな。とりあえず生きてはいるとだけ言っておこうか」
和音様は義祖父母が僕の前に姿を現すことは二度とないと言っていた。
恋人同士になってから、和音様はとても僕を甘やかしてくれる。今までこんなに甘く扱われたことがなかったのではっきり言ってとても戸惑う。和音様は本当はずっとこうしたかったと仰られた。でも、僕が和音様の気持ちを受け入れるまでは、もしくは高校生になるまではと我慢していたらしい。こんなに優しくされていてもいいのだろうかと少し不安になるけれど、その度に和音様が
「今まで我慢していたんだ。やりたいことをやらせてくれ」
と言うので僕は真っ赤になって全てを甘えて受け入れた。
「義兄さま、お聞きしたいことがあるんですがいいですか?」
「なんだ?愛夢。何でも聞くといい」
ある日、僕はずっと疑問に思っていたことを思い切って尋ねてみることにした。
「あの、あの、ですね。…僕が、初めてこちらに来て義兄さまの部屋に連れられて行った時の事なんですけど…」
僕の言葉に、和音様の顔が見てすぐにわかるぐらいに真っ赤になった。そして、突然椅子から降りてがばりと僕に向かって土下座した。
「すまない!許してくれ!」
「えっ?に、義兄さま?」
和音様が頭を下げる意味が全く分からなくておろおろとしてしまう。すると和音様はゆっくりと頭を上げ、僕を捨てられた子犬のような目で見た。
「…お前が聞きたいのは、あの日俺がお前に対して行った行為についてだろう」
「…!は、はい…」
あの日、僕は和音様に裸になれと言われお尻に変な棒を入れられてからイかされた。その後、和音様は僕に対して全く欲を垣間見せることはなく、はっきり言って和音様に好きだと言われた時はそんなそぶりが全くなかったのに、と不思議に思った。
「俺はお前に一目ぼれをしてからというもの、お前に対して抱きたいと言う欲望に日々苛まれた。だが、お前はまだ中学生。せめて高校生になるまでは絶対に手を出すまいと思っていた。…だが、思ってはいても欲望は募る。昔の俺ならば体の関係だけの女でも相手にしただろうが、お前を好きになってからと言うもの他の人間にそう言う行為をすることが出来なくなった。…そこで、だな…」
和音様はそこまで言うと視線をきょろきょろとさまよわせた後、大きく深呼吸してから言葉を続けた。
「…我が会社の一つに、アダルトグッズを開発、製造をしている部門があるんだがな。あの、お前に入れた棒は、実は開発中のもので体内に入れるとその体内の測定を行い性感帯の場所、締め付け、体内の感触に至るまでを記憶することができるんだ。それで、その…、お前の中を記憶させて、お前の胎内と全く同じオナホールを開発してだな…」
「…〜〜〜〜――――――!!」
和音様の言葉を聞いて、僕はもうこれ以上ないってほど真っ赤になって金魚のように口をパクパクとさせてしまい、両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込んでしまった。
つまり、和音様は、僕に直接手を出すわけにはいかないので、僕が高校生になるまではと僕の胎内のオナホールを作り、それを使って欲を発散させていたと…
「だ、だがな。おかげでお前のいいところはばっちりわかっていたから、お前を抱いた時には思い切り気持ちよくさせてやれたと思うんだ!」
「に、義兄さまのばかっ!」
変な言い訳をされて余計に恥ずかしくなって僕はくるりと背中を向けて部屋を出ようとした。
「愛夢」
だけど、その前に和音様に後ろから抱きすくめられてしまって。優しく頬を撫でられ、耳元で甘く名前を呼ばれる。それだけで僕は抵抗なんて一切できなくなってしまって、大人しく和音様の腕にすがってしまった。
「…すまない、愛夢。お前を傷つけたくなくて、必死に考えた結果がそれだったんだ。我ながらバカだとは思う。結局、高校生になる前に思いが通じ合った喜びでお前を抱いたし。…だが、俺はお前を…」
「いいんです」
泣きそうな声で謝罪する義兄様の言葉を遮り、僕は緩く頭を振る。
「…さ、さっきは、恥ずかしくて、あんなこと言っちゃったけど、でも、でも、僕をそれだけ思っていてくれたってことが嬉しいって言うか…」
「愛夢」
和音様は、真っ赤になって口ごもる僕のあごを指ですくい自分の方に向けさせると軽く口づけた。
「…愛夢。愛してる。」
「…僕も、愛してます…。」
和音様の腕の中で体をくるりと反転させ、和音様の首に腕を回す。
「和音様。義兄様。ありがとう。僕を、愛してくれて。僕を助けてくれてありがとう」
微笑んでそっと目を閉じると、和音様は僕を抱き上げ寝室へと連れて行った。
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