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10

和音様はベッドの中で、義祖父母から僕を義弟に迎えるに至った経緯を話してくれた。

あの、テラスで初めてお会いした日。あの時に、僕に一目惚れをしたのだと。義祖父母が秘書にと勧めてきたときにそれが僕だとわかり即申し出を受け入れたそうだ。

「だが、俺は一つだけ過ちを犯した。お前を手に入れたい欲が勝ったがために、奴らに簡単に『条件はこちらの籍に入れること』と言ったことだ。」

ずる賢い義祖父母は、その言葉で和音様が僕にただ秘書としてではなく執着めいた何かを感じ取ったらしい。条件を掲示した和音様に対して

『今まで跡継ぎとして育てるために最高の教育をしてきた。それはもう山本の財産を半分つぎ込むほどに。和音様に愛夢を差し出しては、我が会社は跡継ぎがいなくなります。それに値する物を頂かないと愛夢はお渡しできません』

と言ったそうだ。
本来ならば分家の、しかも傘下である義祖父母たちが言ったセリフはいわば逆に自分たちを滅ぼす可能性のあるものだ。だが、義祖父母は僕が自分たちの手元にいる限り何を言ってもある程度は和音様が要望を飲むだろうと考えていたようだ。

「俺は焦っていた。お前が手に入るのならば億の金などはした金だと要望を飲んだのだ。どうしても俺はお前が欲しかった。その代わり、今後一切お前に接触しないことを約束させたのだが、欲深いものはどこまでいってもその欲が尽きることはない。」

金を受け取った義祖父母はその金で豪遊し、感覚が狂ってしまったのだろう。ついには自分たちの会社の金にまで手を着け、あわや倒産の危機まで追い込まれた。
そこで、ずる賢い義祖父母は僕を盾にまた和音様に金の無心に来たらしい。

だが和音様だってバカではない。僕を引き取るために金を渡した後、すぐさま義祖父母の身辺を洗い直し正当な理由で援助をはねのけ、傘下から外すと宣言したそうだ。


この事は和音様が山本グループ全てのトップに話を通していたため、義祖父母は和音様に僕の事で強気に出ることもどこにも助けを求めることも出来なくなったらしい。そこで義祖父母はどうにかして和音様に仕返しをできないかと考えてあの男に話を持って行った。

『和音様の名前を出せばあの子は言いなりになる。あなたのことが和音様にばれることもない。』

あの男はそんな二人の口車にまんまと乗せられ、今回の話を引き受けたそうだ。

「お前を差し出すことで俺に仕返しもできるし、金まで手に入れることができる。だが奴らは俺を見くびりすぎた。俺がお前に対して何も対策を練っていないと考えたのが大きな間違いだ」

対策…?

何のことかと思い首を傾げる僕に和音様は優しく微笑み、僕の頬を撫でた。

「…お前の持ちもの全てには、GPSがついているんだ。いつもと違うルートを通ったり、見知らぬところで何時間も動かずにいると俺の携帯に異常を知らせる連絡が入るようになっている」

和音様の言葉に驚きのあまり口を開けたままになった僕に和音様が少し拗ねたような顔をした。

「…だって、お前が誰かにさらわれたりだとか、危ない目に合ったりだとかしたら嫌じゃないか」

現に奴らにさらわれたようなものだし、ともごもご口ごもりながら僕を抱きしめる和音様に、僕はもう胸がいっぱいになってしまって。
静かに流れた涙をそのままに、和音様を抱きしめ返すことしかできなかった。

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