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6

それからの僕の生活は、今までのものとがらりと変わった。

転校はしていないので学校自体では何も変わらないけれど、家に帰ると和音様が家庭教師として僕につきっきりで勉強を教えてくれた。
ただ難しいことを教えるだけではなく、
『秘書には雑学も必要だ』
と博物館や美術館、映画やオペラなど様々な所へ連れて行ってくれて、それにまつわる話など色々なことを教えてくれた。
そして和音様は、食事も必ず僕と取る。

僕は義祖父母に引き取られてからというもの、こんな風に誰かと出掛けたり食事をしたりすることがなかった。

和音様は、とても厳しい。でも、とても優しい。

この人の役に立ちたい。この人のおそばにずっといたい。

和音様の、僕に対するそれが、例え自分の将来に役に立つ秘書を育てるためだけのものだとしても。僕は。
和音様に惹かれていくのを止めることができなかった。


最近になって僕は毎晩、あの初日に行われた行為を思い出す事が多くなった。もう一度、和音様にあんな風に触れられたい。和音様の温もりを、全身で感じたい。…抱かれ、たい。


でも、そう思うこと自体が僕を秘書として見込んでくれた和音様への裏切りのような気がして、そんなことを考えては自己嫌悪に陥って泣く、という夜が多くなった。

「…最近、元気がないようだが。どうした?」

気を付けてはいてもやはりどこか様子がおかしいのがばれてしまったようで、勉強の最中和音様が僕の顔を覗き込んだ。いけない。和音様に心配をかけるだなんて。

「なんでもありません…、すみません、昨日少し眠れなくて…」
「そうか。何かあったらすぐに言え。お前は将来俺の片腕になる大事な身なんだからな」


『片腕になる大事な身』


和音様は、僕の事を優秀な人材に、自分の役に立つように育ててくれているだけなのだ。その事実を改めて突き付けられ、僕は泣きそうになってしまうのを必死にこらえた。


「…はい、すみません。頑張ります。」
「…おい、愛夢…」
「和音様、少しよろしいでしょうか」

頭を下げた僕に和音様が何か言おうとした時、執事長が和音様を呼んだ。何かトラブルでもあったのだろうか。とても真剣な顔をしていた。

執事長の様子が何故か引っかかったが、僕は頭を一つ振るとすぐにテキストに向き合った。今僕がすべきことは勉強。和音様の、お役にたてるように。

ただそれだけの為に、黙々と机に向かった。

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