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おまけ

「そう言えばさ、八木沼は出倉とヤッたの?」

「ブフォッ!!」

俺とりんが晴れて恋人になってからの昼休みの事。一緒に屋上で弁当を食べていた友人がりんにふと思いついたかのように聞いた。そしたらりんは飲んでいたお茶を盛大に吐き出した。

「なんっ、…、なにを、急にっ、げほ、ごほっ!」
「や、だってさ〜。こんなこと言っちゃなんだけど出倉ってヤリチンじゃん?ちょっとでも気に入った奴はあの手この手で誘惑して、彼氏持ちだろうがなんだろうがぱっくりいっちゃうって聞いたし。つか実際そうだし。しかも出倉と寝た奴って、出倉を忘れられなくなるらしいけど。」

苦しそうにむせるりんの背中を撫でながらふうん、と話を聞いていた。りんがむせながら俺の事をちらちら見てくる。ばかだね、りん。さっきお茶を吐き出したことで答えは一つしかないでしょうが。

「りん、俺に触るの三か月禁止ね」
「なんで!?」

ようやく息を整えたりんにそう言うと、これ以上ないってほど目を見開いてりんが俺を見てきた。

「ヤッたんでしょ?出倉と」
「や、ヤッてない!!ほ、ほんとにヤッてない!信じてくれ!」

必死に訴えるりんを冷めた目で見ると、りんはうっと息を詰まらせた。

「…しょ、正直に言うと、ヤろうとしたことはある。ごめん。それは、ほんとのことだから嘘はつかない。…でも、でも…、ヤッてないのも本当だ…」

あからさまにしょげかえるりんに、俺と友人は顔を見合わせた。
やがて、りんが覚悟したかのようにぼそぼそと何かを呟く。

「…ったんだ…」
「え?」
「〜〜〜〜っだから!!勃たなかったんだって!!」

突如大声で叫び、真っ赤になってはあはあと息を上げたりんを見て俺と友人が目を丸くした。

「…八木沼、インポなの?」
「ちげえ!!」

友人の言葉にすぐさま反論する。そりゃそうだ。俺とはヤッたんだから、不能ではないはずだ。だったらどうして…?

「…ついのことを想像すると、いくらでも抜けたのに、出倉といざそういう雰囲気になった時、全く反応しなかったんだ…」

りんの言葉に、俺の顔はこれ以上ないってほど赤くなったのがわかる。だって、つまりそれってあれだろ。

「それって、終と出倉を間違えて、出倉を愛してるつもりでも八木沼の体は『こいつはついじゃない』ってわかってたってことだよな」

友人が言った言葉はまさに俺が考えていたことそのままで。俺はそれを聞いて、ますます顔が熱くなるのが分かった。ふと視線を感じてりんを見ると、りんは泣きそうに眉を下げ俺をじっと見ている。

…ああ、もう。

俺はりんの脚の間に移動して、りんの胸に背中を寄りかからせた。

「つ、つい…?」
「…お前から、俺に触るのは禁止。…でも、俺から触るのは別に禁止じゃないから」
「…っ、つい…!」


嬉しそうな声が上から聞こえて、足の間に座る俺を抱きしめようとしてりんの腕がぴたりと止まる。俺はその腕を掴み、そっと自分の体に巻きつけた。

「…ちょっと寒いなって思っただけだから」
「つい…!」

りんの話は嬉しかったけど、ヤろうとしたことには変わりないから。出倉と俺を間違えていたんだからそれは仕方のない事なんだけど、りんが他の奴を抱こうとしてたのがすごく悔しくて出した禁止令。


ああ、それを大人しく受け入れちゃうりんも、そんなささいなことでやきもち妬いちゃう俺も、相当ばかだよね。


目の前の友人が『ツンデレきしょい』とにやにやしながら言ってきたので軽く蹴っ飛ばしてやった。


おまけend

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