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5

和音様は僕が白濁を吐き出すと無言で寝室を出て行った。ベッドに一人残された僕は怖くて、恥ずかしくて、悲しくて、絶頂の余韻に震える体を小さく丸め涙を流した。

しばらくして、和音様がタオルを持ってもう一度寝室に現れた。びくりと怯え顔を上げた僕に無言で近づき、手にしたタオルで僕の体を拭きだす。

「…っ」
「怖がるな。何もしない、先ほどの汚れを拭くだけだ」

体をすくませた僕にそう言って、言葉通り和音様は僕の汚れた下半身をキレイに拭くと僕に新しい服を着せだした。

「…あ、あの、自分で…」

着ます、と言おうとして、和音様の無言のオーラに言葉を飲み込む。全て着替え終わり、和音様は大人しくなされるがままにされていた僕を、まるでいい子だとでも言うように頭を軽くなでた。

「今日は疲れただろうから部屋でゆっくりするがいい。お前の部屋は俺の部屋の隣だ。本格的な仕事は明日から教えよう」

そう言って、和音様は僕を立ち上がらせ、隣の僕の部屋へと連れて行った。

「食事は部屋へ運ばせる。ゆっくりお休み」



和音様が出て行ったあと、僕は寝室であろう部屋の扉を開け、ベッドにぽすんと転がった。


…何だったんだろう。てっきり犯されてしまうのだと思っていたのに、和音様はただへんな棒を入れ、僕を、イかせただけだった。
その行為をされている間の和音様はずっと無表情でとても怖かったけれど、体を拭くとき、服を着せているとき、そしてこの部屋へ連れてきてくれたとき。

同じように無表情だけれど、その目が、手が、何だかとても優しく思えた。


撫でられた頭にそっと触れる。
…頭を撫でられたのは、いつぶりだろう。僕は困惑したまま、いつの間にか意識を深い闇に落としていった。


「おはよう」
「お…、おはようございます」

翌日の朝、執事に起こされて食堂へと向かうと和音様はすでに食卓に着いて新聞を読んでいた。その姿がものすごく様になっていて、思わず見とれてしまう。

「どうした?席につけ」

和音様に言われて慌てて席に着くと、僕の目の前に朝食が運ばれてきた。と同時に、和音様の前にも朝食が置かれる。

「あ、あの…、もしかして、待っててくれたん、ですか…?」
「…たまたまだ」

それきり、無言で食事を始めた和音様をじっと見ていると早く食べろと言われ、恐る恐る手を伸ばす。いい具合に香ばしく焼かれたパンの匂いと、コーヒーの香り。

そう言えば、誰かと朝ごはんを食べるだなんて何年振りだろうかと懐かしく思っていたら和音様が僕を呼んだ。

「食べながらでいい、聞け。今日からお前はこの家から学校に通うんだ。帰ってきたら少しづつ秘書の勉強もしていけ。俺が教えてやる。早く仕事を覚えてこの俺の秘書として役に立て」

その言葉を聞いて僕はずきりと胸が痛んだ。

『役に立て』

それは僕が無理やり引き取られてから毎日のように聞かされていた言葉。役に立たなければ意味がない。役に立たなければただのゴミ。

…和音様も、そうなんだろうか。いや、そうに違いない。だって、和音様は僕を将来自分の秘書として使うために義祖父母から僕を引き取ったのだ。

「はい…わかりました、和音様」
「その呼び方はやめろ」

俯いて小さく返事をした僕に和音様が苛立ちを含ませた声でぴしゃりと言う。どうしよう。和音様と呼ぶのがだめなら、なんとお呼びすればよいのだろう。

「お前は俺の弟になったんだ。他人行儀な呼び方をするのはやめろ」

弟。弟…。
そういえばそうだ。僕は今日から山本愛夢なんだ。

「はい…。…にい、さま…」

…これで、いいのだろうか。小さな声で『義兄さま』と呼ぶ。ちらりと和音様を見ると、和音様はパンを手にしたまま固まっていた。

「…?」
「…それでいい。さ、食べなさい」

食事の続きを促され、パンに手を伸ばす。その後、僕も和音様も無言だったけれど何だか和音様は少し嬉しそうな気がしたのは気のせいだろうか。

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