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14

翌日、教室に行くと出倉がものすごい恨みがましい目で睨んできた。クラスの皆に朝一に
『八木沼くんに僕なんかより沼岸くんがいいって振られちゃった…』
と涙ながらに悲劇のヒロインを演じたらしいが、意外にもクラスの奴らはすでに出倉の本性に気付き始めていたらしく表面だけかわいそうにと口にして放置したらしい。

自分は学園のお姫様で、自分のために俺に皆が嫌がらせを始めるかと期待していたのに中にはそりゃお前じゃ振られるよななどとつぶやく奴らもいて思い通りにならない事にさらに憤慨していた。

俺にはべったりとりんがくっついているので、自分で下手に手出しができずこうして睨むのが精一杯なのだろう。

「そっかあ、公園で唯一遊んでたのってお前だったのかー。」

目の前でにこにこと笑うのは隣のクラスの友人で、りんに俺が探している相手だと決定打を与えた人物だ。
休み時間に教科書を借りにきたのだが、俺にひっつくりんを見て楽しそうに話を振ってきたのだ。りんは俺にくっつきながらぶすっと膨れている。

「つい、あんまり他の奴と話すな。」
「うーわ!八木沼って独占欲強いんだなー!昔の噂ってほんとだったんだなあ」

友人がさもおもしろそうに声を上げる。

「で、晴れて恋人同士としてお付きあいをはじめたと。」
「ああ、」
「え?付き合ってないよ」

さらりと俺が返した内容をりんが信じられないと言った顔で見つめる。

「えっ?なに、なにそれ?友達なだけってこと?」
「うるせえ!友達なんかじゃねえ!つ、つい!なんでそんなこと言うんだ!?お、俺たち、恋人だろ?き、昨日はあんなに愛を交わしあったのに…!」

だって、ねえ。そんなこと言われてもさ。

「うん、確かに俺はお前が好きだけど。好きだから、ちゃんと思い出してくれて嬉しくて抱かれた。でも、それだけ。
大体さぁ、転校してきて別の奴と間違えてすぐにそいつと付き合ってさ、目の前で散々いちゃつかれて暴言はかれてたのにそれを今更俺が本物でしたごめんなさいなんて言われて、そんな愛してるを簡単に信用できると思う?」
「うぐ…っ!」

甘いよ、と言う俺にりんがぐさりと傷ついたような顔をして自分の胸を押さえる。

間違われたことで俺だって傷ついたんだ。これくらいの意地悪許されるだろ?

目の前の友人が呆気にとられたような顔をしていたが、確かになあ、と頷いた。それに更に傷ついたようで、がくりとその場にうなだれる。

「じゃあ、じゃあ、ついは、俺と恋人になるつもりはないのか…?俺の事をもう愛してはくれないのか…?俺は、俺はこんなにもついを…」
「だからさ、」

うなだれながら俺の背中にしがみつき、泣きそうになっているりんに顔を向けて、その頬に軽くキスをする。
りんは俺の行動に驚いて、がばりと顔を上げて目を見開いて俺をみた。

「好きだよ、りん。だから早く俺を信用させて?お前の対は俺なんだって証明して見せてよ」

にこりと微笑むと、りんはにやりと形のよい唇の口角をあげ、挑戦的な笑みを浮かべた。

「上等だ。すぐに思い知らせてやるよ、俺がどれだけお前を想っているかをな」


そのセリフを聞いて、心底ほっとしたのは顔に出さない。強気な態度でああ言ったけどやはりほんとは一度間違われてしまった恐怖は拭えない。
それを取り払えるのはりんしかいないのだ。

「楽しみにしてる」

だから、早く俺をあの時のように独占して。俺にお前を独占させて。

りんのことを考えるだけで痛んだ右肩の傷は、今ではりんのことを考えるだけで熱くなるんだから。


それから、りんは宣言通り俺をでろでろに甘やかして睦言を吐いてと昔以上の執着を見せて晴れて恋人の座を手に入れることになるのは3ヶ月後の話。


end
→あとがき

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