12
「ん…っ、ふ、ぅ…、あ…」
くちゅくちゅと、艶めかしい水音と二人の甘い吐息が暗い室内に響く。
何度も何度も角度を変え、時に啄み、歯列をなぞり、控えめに差し出す舌を逃がすまいと吸い上げ絡め取る。
深い口づけで翻弄しながら、指や手のひらで敏感な耳裏や首筋を愛撫するのも忘れない。
初めての感覚に俺はもうすっかり息が上がって、弱々しくりんの腕にしがみつくしかできなかった。
ちゅ、と軽く啄んでようやく長い口づけから俺を解放するとりんはくすりと微笑みながら俺のシャツのボタンを外し始めた。
「…かわいい、つい。」
とろけそうな微笑みと共にキスをされ、恥ずかしくて真っ赤になって顔を逸らす。
あれから、りんは自分が出倉と付き合いながら感じていたことを聞いてほしいと話し出した。
名前を聞いて俺だと思い、喜びのあまりすぐに交際を申し込んだもののどこか違和感があったと。
「俺は優しいお前が大好きだった。出倉の優しさは何故か作られたような嘘臭い優しさのような気がして…」
俺に構い倒す出倉を見て、俺にばかり構う出倉に焼き餅を妬いたが今思えばそれは逆の意味だったらしい。
確かにやきもちはやいたけど、俺に近づく出倉に腹が立っていたのだと言った。
「あの時、教室でお前の目を見たとき。それでやっと気がついた。
どれだけ姿が変わろうとも、お前の優しい目は変わらない。
俺だけに向けられる、俺のためだけの目だ。」
今までちゃんと見なくてごめんな、と悲しそうに微笑まれた時に、俺はとうとう我慢が利かなくなって閉じ込めたはずの気持ちを溢れさせてしまった。
「おそい、よ…っ!俺が、どれだけ、お前のこと…っ!」
ぼろぼろ泣きながらばかばかとりんの胸板をたたく俺を、りんはひどく嬉しそうに抱きしめた。
「ばか、ばかりん、…っきらい、きらい…!」
「うん、ごめん。俺は好き。好きだよ、つい。」
「きらい…っ、ふ、ぅ…っ、えっ…、ぇ…っ、
でも、好き…!」
そう言った俺を軽く抱き上げて、りんは自分の部屋の寝室へと連れ込んだ。
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