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7 八木沼side

高校になってようやく戻れた懐かしい町に足を踏み入れた時はどきどきした。この町のどこかに、あいつがいる。いてくれるだろうか。引っ越したりはしていないだろうか。
転校した高校で、初めて入ったクラスでもあいつを探した。偶然に期待した。
担任に言われ自分の席に行ったとき、隣の奴が俺に声を掛けてきた。

「と、隣同士よろしく」

そう言って話しかけてきたそいつをちらりと一瞥する。眼鏡と長い前髪のせいでよく顔が見えない。こんな奴が俺のあいつであるはずがない。

「はあ?俺がお前みたいなしょぼい平凡野郎とよろしくなんてするわけねえだろ。馴れ馴れしく話しかけてんじゃねえよ」


俺はあいつ以外いらないんだ。ろくに顔も見ずにそう言い捨てると、そいつがびくりと体を竦めたのがわかったが俺には関係ないと無視しておいた。
それからそいつは俺に話しかけてくることはなくなった。自分で言ったことなのに、それが異様にむかついた。なんだこいつ。何様だ。
意味の分からない苛立ちに、自分からは絶対に話しかけてなんかやるもんかと俺は無視を続けた。
転入してきてから、毎日のように告白を受ける。いい加減うんざりだが一応きちんとお断りをする。

『俺にはあいつ以外考えられない』

そんなある日、クラスの中でもかわいらしい顔立ちで姫だなんて呼ばれている出倉が俺に話しかけてきた。

「僕の事覚えてる?昔公園で遊んだんだよ。八木沼君、見晴らし台から落ちたことあったよね。あの時は僕、君が死んじゃったんじゃないかってすごくびっくりした。でも、怪我も何もなくてほんとよかった。あれから八木沼君、すぐに引っ越しちゃって僕悲しかった…」

それを聞いて、俺は自分の体が震えるのが分かった。まさか。まさか、こいつが。

「…お前、下の名前なんだっけ?」
「ぼく?シュウだよ。出倉周」

そうだ。確かにあいつの名前だ。『シュウ』

「会いたかった、周…!」

俺はついに愛しのあいつを見つけることができたと、歓喜に満ちて周を抱きしめた。

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