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5

「…ちっ、」


放課後、友人を待つために教室で本を読んでいるとがらりと教室の扉が開いて八木沼が現れた。八木沼は次期生徒会役員候補で今日は役員会に出ていたらしい。恐らく教室で待っているはずの出倉を迎えに来たんだろう。
俺の顔を見るなり舌打ちをして、出倉の席に座った。

俺から話しかける用事はないので、無言で読書を続ける。

「…おい」

ふと話しかけられ、顔を上げると八木沼が眉間にしわを寄せ俺を睨んでいた。睨むくらい嫌いなら話しかけなければいいのに。

「なに?」
「…周、どこに行ったか知らねえか」
「…知らない。携帯でもかければいいだろ」

なんでわざわざ俺に聞くんだ。俺の答えが気に入らなかったのか、またひとつ舌打ちをして前を向いた。また本に目を落として続きを読んでいると、がたんと立ち上がった音が聞こえて本に影が落ちる。顔を上げると、八木沼が俺の目の前に移動してきていた。

「…お前はなんでいつも周にくっついてるんだ。」
「俺がくっついてるんじゃないよ。あいつが近寄ってくるんだ。」
「はっ、そんなわけあるか!周がお前みたいな平凡に好意を持つわけねえだろ!」

鼻で笑って俺を見下してくる八木沼に、ため息をこぼす。

「…確かに好意を持ってるわけじゃないだろうね」
「…は?」

俺の言葉の意味が分からなかったのだろう。八木沼が眉を寄せ怪訝な顔をしている。、話は終わったのかと続きを読むために本に目を落とすと、八木沼はなぜか俺の前でしばらく無言のまま立っていた。
不思議に思って顔をもう一度上げ、八木沼を見つめると八木沼は何故か目を見開いて俺をじっと見た。

「…お前…」
「悪い!シュウ、待ったか〜!あれ?八木沼?うわ!めっちゃ久しぶり!」

八木沼が何か言おうとしたその時、がらりと教室の扉を開けて隣のクラスの友人が現れた。俺は本をカバンに直し、立ち上がって友人の元へ向かう。
こいつは数少ない小学校時代からの友人だ。八木沼に余計なことを吹き込まれてはたまらない。

「行こう」
「えっ?あ、う、うん。じゃあな、八木沼!」

俺は友人の手を引いてそそくさと教室から立ち去る。その時、八木沼がどんな顔をして俺を見ていたかなんて知る由もなかった。

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