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3

ある日、八木沼と遊んでいると1人の子供が近づいてきた。

「ねえ、なんでいつもその子とばかり遊んでるの?僕とも遊んでよ。そんななんの変哲もない子なんて遊んでても面白くないでしょ?」

話しかけてきたその子はとてもかわいらしい顔をしていて、取り巻きのような奴らをいつも幾人かひきつれているこの公園の子供たちの中では結構有名な男の子だった。
自分を選ぶのが当然だとでもいうようにどこかばかにしたような笑顔で俺たちを見ている。

「俺はこいつがいいんだ。お前なんかと遊ばない、あっちにいけ」

八木沼が冷たくそう言うとそいつは途端に顔を真っ赤にして怒りだした。

「な、なにさ!この僕が声かけてあげてるのに!」
「あっ!」

そいつはずかずかと八木沼の近くに寄ってきたかと思うと断られたことがよほど悔しかったのか、八木沼を両手で思い切りどんと押した。
俺たちは、公園にある見晴らし台の上に乗って遊んでいた。思い切り押されてよろけた八木沼が、見晴らし台の木の柵に寄りかかった時。たまたま腐っていたのか、木の柵がばきりと折れて八木沼は見晴らし台から落ちた。

「りん!」

俺は咄嗟に八木沼の手を取り、引っ張ろうとしたが落ちる八木沼に逆に引っ張られ八木沼と共に見晴らし台から落ちてしまった。

「うあああああ!」

見晴らし台自体はそんなに高くはない。だが運の悪いことに、八木沼を庇って下敷きになった俺の真下に誰かが捨てたのだろう割れたガラス瓶があったのだ。
その上にまともに落ちてしまった俺は、右肩にガラスが刺さってしまった。

俺の叫びを聞きつけた公園にいた大人たちが慌てて救急車を呼ぶ。10針ほど縫いはしたものの、怪我自体はそんなに大したものではなくただ痕が残るだろうとは言われた。病院に運ばれて手当てを受ける間八木沼は俺から離れず、ただひたすらに泣きじゃくっていた。


「ごめん、ごめん。今度は、俺が守るから!つい君のこと、俺が絶対守るから!!」

治療が終わり、待合室で八木沼はボロボロと泣きながら何度も何度もそう言った。

「いいよ、大丈夫。それより、りんがなんともなくてよかった。」

俺はそんな八木沼に、笑いながらそう言った。
それから、八木沼はすぐにお父さんの仕事の関係で遠い所へ行かなくちゃいけなくなったと泣きそうな顔で公園で俺に伝えた。いつ戻ってこれるかもわからない。もしかしたら大きくなるまで帰ってこれないかも。

ものすごくショックだった。行かないでと泣いてしまった。八木沼はぐっと唇を噛みしめて俺の肩を掴みまっすぐに俺を見た。

「絶対、会いに来るから!忘れないから!どこにいても、どんな姿になってようと、必ずついを見つけるから!」

それを最後に、八木沼は俺の町から姿を消した。



あれから、10年。

「…なあにが、『どんな姿になっても』、だ」

心底忌々しい、とでもいうような視線を俺に投げて、出倉の肩を抱いて教室を出ていく八木沼の後ろ姿にぽつりとつぶやいた。

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