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八木沼とは、まだ小学校低学年だったころに数回遊んだだけだ。
たまたま行った公園にいたのが、八木沼。一人つまらなそうに公園の隅に立って石を蹴っている八木沼に声をかけたのは俺からだった。
「なにしてるの?暇なら俺と遊ばない?」
声をかけた俺に驚いた目を向けてきた八木沼は、少し目を泳がせた後口を開いた。
「お、俺は上流階級のお坊ちゃんだからな!おまえみたいなふつーの庶民とは遊ばないんだよ!」
早口でそうまくし立てられ、びっくりして同時に悲しくて。
「…そ、か。ごめんね。」
泣きそうになりながらその場を離れようとしたら腕を掴まれた。
「なに…?」
「お、お前、俺とそんなに遊びたいのかよ。」
真っ赤になりながら俺の腕を掴んでそう言う八木沼に、俺は眉を下げたまま頷いた。あのとき、何故か俺は八木沼と遊んでみたくて仕方なかったから。
「し、しょうがないな。そんなに言うなら遊んでやるよ!」
そう言って笑った八木沼を見て俺は、どきりとした。
八木沼は塾や習い事に忙しいらしくて、しょっちゅう公園に来れるわけではないと言っていた。実際、一週間のうち一回も来れるかどうか怪しいくらいで。それでも、八木沼は公園に来たときは必ず俺と遊んだ。
一回だけ、俺は公園に行かなかった時があって、その時八木沼は公園で俺を待っていたらしく
「俺がせっかく来てやったのにいないってどういうことだ!」
と怒られてからは俺は毎日いつくるかわからない八木沼を公園で待つようになった。
八木沼は小学生ながらに、とてもきれいな顔立ちをしていた。背も高く、偉そうだけどほんとは優しくて。黙っていても人を惹きつけるようなオーラを持っていた。そんな八木沼とほんとは遊んでみたい奴らはいっぱいいて、でも声を掛けられなかったみたいでそんな奴らが俺と一緒にいるのをみて自分もと近づいてきて俺から八木沼をとろうとしたけれど八木沼は俺以外の奴と絶対に遊ぶことはなかった。
それが、俺が八木沼にとって特別な友達になったような気分がしてものすごく嬉しかった。
八木沼は、きらきらとしていて。俺にはまぶしい太陽のようで、本人に言ったらものすごく嬉しそうに笑って
「お前はひまわりだな。知ってるか?ひまわりはな、太陽のあとばっかり追ってくるくると動くんだ。だからお前はひまわりだ。いつも俺の後を追ってこいよ!」
そう言った八木沼を見たときに、俺は八木沼が好きなんだと唐突に理解した。
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