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9

ちりんちりん、と小さな鈴の音がなる。
愛しい愛しい恋人は、自分の携帯についたストラップを目の前にぶら下げてにこにこと笑いながら頬杖をついている。


ああ、かわいいな。


「…なに?」

じっと見てると視線に気づいた原口が俺を見て首を傾げた。

「いや、かわいいなって思って」
「やっぱ北島もそう思う?インコかわいいよね」

…ちがいますけど。


あの後、俺は原口の携帯に外したストラップをもう一度付けなおした。

『あの時、あんなこと言ってごめんね。伊集院さんに言われて恥ずかしくて…』

自分の気持ちを認めたくないのにストラップを大事にしているだなんて指摘されてごまかすために言った言葉だったらしい。
オレに聞かれて取り外されて、どうやって返してもらおうかとものすごく悩んだし悲しかったと聞かされて俺はストラップをあげた自分を褒めてやりたくなった。


「そうだ、あのときの奴に俺、まだ何も言ってないな。」

ストラップの交換を頼んだ生徒に後で、と言ったきりなので交換は必要なくなったことを伝えていない。もし待っていてくれたらどうしようか。
とはいえ、あの時原口が泣き出したのでクラスも名前も聞きそびれたんだけど。

「一クラスずつ探していくか…原口?」

ストラップを眺めてご機嫌だった原口が口をとがらせてじっと俺を見ていた。なんだ、どうした?

「…うわきもの」
「なんで!?」

あらぬ言葉を浴びせられ思わず身を乗り出した。原口は口をとがらせたままぷいと横を向く。

ちくしょう、そんな仕草もかわいいな。

「だ、だって、あの時、オレの目の前であいつの名前とクラス聞こうとした。北島、俺が好きだって言ってたくせに。今だって、あいつ探すって…。そんなにあいつに会いたいんなら、いいもん。北島なんか行っちゃえ。」


あまりにもかわいらしい怒りに、俺はもう少し身を乗り出して目の前の原口に近付くとそっぽを向いているためこちらに向いているその頬に軽く口づけた。

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