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「お、俺が気持ち悪いって言ったのは北島の事じゃない…!」
北島と仲良くなれて嬉しかった。あのことがあってからの北島はほんとにものすごく優しくて、今までの意地悪が夢だったんじゃないかって思うくらいだった。
北島と遊ぶのは楽しくて、話をするのが楽しくて。毎日毎日続けばいいなって思ってた。最近になって教室に北島がまだ来てないとさみしくて、早く来ないかなってそわそわして待つようになった。北島は教室に入ると真っ先に俺を見つけて笑ってくれるから、それがものすごく嬉しくて。
ずっとずっと北島の傍にいたくなった。そしたら今度は、北島がじゃれ合って俺に寄り添ったり頭を触ってくれるのが嬉しくなって。もっと触ってくれないかなって思うようになって…
泣きながら紡がれる原口の言葉は俺には麻薬の様だった。一言一言が、聞かされるたび体の隅々まで俺に喜びを染み渡らせる。
「あ、あの日、北島に頭を撫でられた時、お、おれ、もっとしてほしいって…。頭を撫でるだけじゃなくて、もっと…。ぎゅってしてほしい、なんて思っちゃったんだ。」
「…!」
「北島は、友達なのに、友達に対してそんな風に思う俺が気持ち悪いって…!」
そこまで聞いて、俺はとうとう我慢できなくなって原口を思い切り抱きしめた。
「き、きたじまっ…!」
「気持ち悪くなんかない」
あの時の会長の言葉は、原口がそう思うことは悪い事ではないと言う意味だったんだろう。
嬉しい。
俺は原口を抱きしめながら、泣き出してしまった。
「俺、お前が好きだって言っただろう…?お前にそう思われて、どれだけっ…!」
涙が後から後から溢れてきて、言いたいことはたくさんあるのに上手く伝えることができない。
「そう、思うことを、気持ち悪いなんて言わないでくれ…。それを気持ち悪いなんて言われたら、俺はお前に好きだって言えなくなる…」
「き、た、じま…」
「ちくしょ…、こんな泣いて、俺、かっこわる…」
涙をこらえようと手で目頭をキツク押さえる俺の手をそっと原口が握って離させた。同じように涙に濡れた原口のきれいな目と視線が絡み合う。
「お、俺、あの日から、北島がいつもみたいに、俺の頭撫でたり、あんまり、触ってくんなくなって、さみしかった…」
まっすぐ俺を見つめながら、原口が言う。その言葉に俺はもう胸が苦しくて、苦しくて。
「…言ってよ。俺、北島の口からもっかい聞きたい。」
今なら、応えられる気がするから。
懇願するようにじっと見つめられ、ぐっと唇に力を入れる。
「…好きだ、原口。」
「俺も。俺も、すき。」
そう言って泣きながら笑って、俺に抱きついてきた原口を抱きしめて俺は愛しい人をようやく手に入れられた喜びにまた涙を流した。
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