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7

とりあえず落ち着いて話のできるところを、と移動する。その間も原口はえぐえぐと泣きながら俺の腕にしがみついて離れようとしなかった。

原口が泣いているってのに、俺はしがみついてくれていることに胸を高鳴らせていた。ごめん、原口。

誰もいない階段の昇降口の所に腰を下ろし、まだ泣き続ける原口の背中をそっと撫でてやる。

「どうした?なにがあった?」

俺の問いかけにずび、と鼻をすすり涙で潤んだ目をこちらに向けた。
こんな時なのにそんな顔も可愛いなんて思う俺は最低だろうか。

「…あ、げちゃ、やだ…。」
「…なにを?」

小さな声でぽつりとつぶやく原口に優しく聞き返す。何が嫌だって?
原口は一度、ぐっと唇を噛んでから強いまなざしで俺をまっすぐに見つめた。


「…ストラップ…、その、ストラップ、誰にもあげちゃやだ…!」


原口の口から出た言葉を俺は一瞬理解できなかった。ストラップ?あげる?

「もしかして、これか?」

少し考えてからさっきからずっと手に持っていた青いインコのストラップを見せると原口は何度も何度も頷いた。

「それっ…、お、俺の、だもん…!北島が、俺に、くれたんだもん…!お、お前が、壊したやつのかわりにって、俺にくれたんじゃんか…!なんで、他の奴にあげようとするの…?俺のなのに、他の奴にあげちゃやだあ…!」

わんわんと泣き出す原口にどうしていいかわからなくておろおろと背中をさすった。

「ご、ごめん。だって、お前、黄色がいいって言ってたから交換してもらおうと…。」
「やだ!やだやだ、他のやつなんかいらない!北島のくれたやつじゃないとやだあ…!」


――――――『北島のくれたやつじゃないとやだ』


返して返してと泣きわめく原口に、俺は泣きそうだった。ほんとか?原口。俺なんかがあげたやつでいいのか?だってお前はあの時、仕方なしにつけてるんだって言ってたから。お前が好きな俺は、お前の望みを何とかしてかなえてやりたかったんだけど。

「…いいの、か?お前が大事にしてたのは、会長からもらったやつだったんだろう?」

俺の言葉を聞いて原口はまたぐっと唇を噛んで俯いてしまった。涙だけが、その愛らしい目からいくつも零れ落ちる。泣き顔なんて見たくなくて、笑ってほしくて。そっと頬を伝う涙を指で拭うと原口がびくりと驚いたように顔を上げて俺を見た。

しまった!友達だから、気持ち悪いって言われてたんだ!

慌てて手を引っ込めると、途端に原口の顔がまたくしゃりと歪む。

「は、原口!ごめん!気持ち悪いよな、ほんと悪い!」
「…!き、たじま…、聞いてたの…?」
「…!」

思わず口を両手で押さえる。しまった!俺、そんな所からは聞いてないって言ったのに!

「…ごめん…。聞いてた…」

じっと見つめる原口に嘘なんてつけなくて、観念した俺はあの時聞いていた話を暴露した。

「…ほんとはあの時、会長の『北島は晴哉が好きだから触りたくなるのは仕方ない』って所から聞いてた。…その後の、お前のセリフも。
…ごめんな?俺、お前の事全く考えずにスキンシップを兼ねてお前に触れたりして。気持ち悪かったんだろ?ほんとごめん。お前の事考えずにそんなことして嫌な思いさせて…」
「違う!!」

俺の言葉を遮り、原口が大声を出した。驚いて顔を上げると、原口は傷ついたような困ったような顔をしていた。

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