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5

だめだ。やっぱり、だめだった。俺はどうあがいても原口の中で特別にはなれなかった。会長に、勝つことができなかった。
原口は会長に恋愛感情は持ってはいないと言っていたけど、それでも会長が原口の中で特別なことには変わりはない。


ああ、なんで俺はあの時原口の意識をこちらに向けるのに意地悪な事を言うしかできなかったんだろう。できることならやり直したい。

かろうじてマイナスは脱することはできても、俺はそれをプラスにすることはできなかった。


手の中でくぐもった音を鳴らすストラップをじっと見る。


「…なあ、お前、俺の青い鳥になってくれよ…」


ぽつりとこぼすと、先ほどまで我慢していた涙が言葉と一緒にこぼれ落ちた。



次の日、教室に入ると原口がオレを見て気まずそうな顔をした。
昨日のことを気にしてるんだろうな。

「おはよう、原口」

俺は原口に気にしてほしくなくて、いつもと変わらない口調で挨拶をした。

「あ…、お、おはよ…。あ、あのさ、北島、あの…」
「ははっ、動揺しすぎ。気にすんな、お前はなんも悪くない。な、いつもみたいに接してくれよ。こんなことで気まずくなりたくないんだ」

そうだ。せっかく仲良くなれたんだ。
友達以上にはなれなかったけれど、原口のそばにいたい。まだまだ諦めることはできそうにないけど、お前の笑った顔を見ていたいんだ。

な?と笑いかけると原口は何か言いたげに眉を寄せ俺を見上げた。その様子に思わず伸ばしそうになった手をぎゅっと握って引っ込める。
あぶねぇ、また頭撫でちまうところだった。

「あー、っと、お前宿題やった?まだなら見せてやるよ、どうせ途中で挫折したんだろ?」
「し、してないよ!わかるところは、ちゃんと書いたもん!」

小馬鹿にしたようにからかうときゃんきゃんと食いついてきた。
よかった。いつもの原口に戻ったみたいだ。



その日から、俺は必要以上に原口に触れることをやめた。
アピールしている時はさりげなく寄り添ったり、肩に触れたり頭をぐしゃぐしゃとなで回したりしていたけど、もうしない。
あの時気持ち悪いと言ったのは、きっと友達のようにじゃれ合う中にある俺の下心をひしひしと感じていたからなんだろう。

どうしたって原口が好きな俺は下心なしにあいつに触れるのは無理だから、それなら極力触れないようにすれば問題ないはずだ。


原口の中で、いい友達に昇格できたんだ。
それだけでも俺は救われる。

せめて、原口に好きな人ができるまでは一番近くにいられますように。


あの日原口の携帯から外したストラップを、ポケットの中で握りしめた。

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