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3

それから色々あって、実は原口は会長の事を好きじゃなく、恋人同士というものに憧れていると言うような感じの事を聞かされた時俺は今まで我慢していたものが爆発してしまった。

「好きだ。好きだ、好きだ好きだ。」

何度も何度も繰り返す俺に真っ赤になって『わかった』と言葉にするのを止める様に懇願する原口を見て抱きしめて離したくなくなった。だが、原口は俺の事をそう言う目で見たことはない。というか、人を好きになった事すらないのだと。

かまうものか。こちとらやっと想いを告げたんだ。これから俺の事を意識してもらえるように努力すればいい。とはいえ、今まで散々原口に意地悪な態度をとってきたし、勝手な思い込みで会長からもらった大事なストラップを粉々にしてしまった俺はマイナススタートだ。

とりあえず、ゼロにすることから。

俺はその日から務めて原口に優しく接するようにした。最初はどう接していいかわからない様子だった原口も、最近ではだいぶ慣れてきて心を開いてきてくれたように感じる。今日も今日とて、原口は掃除当番で放課後の教室に残り同じく掃除当番だった俺とたわいのない会話をしている。

「そんでね、そん時伊集院さんがね…」

…とはいえ、その内容がほとんど会長の事についてだと言う時はどうすればよいのだろうか。
楽しそうに話す原口に、まさか会長の話はやめろと言えるわけもなく。俺は嫉妬に狂いそうな胸の内を隠しながら原口の話に相槌を打つのだった。

「北島、どしたの?」

ちょっとアンニュイになってぼんやりしていると原口がこてんと首を傾げて俺をじっと見つめてきた。

「いや、なんでもない。」

微笑みながらそう言うと、俺を見ていた原口がくすくすと笑いだした。

「…どうした?なんか俺の顔についてるか?」
「ううん。俺ね、初めて北島と会話したのってそういえば俺のほっぺたが叩かれて腫れてた時だったなあって。」


ち が い ま す け ど。


「あの時、『意外に軟派なんだな』って言われてすごく腹が立ったけどさ。今こうやって仲良く話せてるのが不思議〜」

けらけらと笑う原口に、軽いめまいを覚えた。違うだろ、原口。そんな嫌な思い出が一発目じゃないだろ…!

「…でもおれ、北島と仲良くなれてほんとに嬉しい。」

えへ、と笑うこいつは小悪魔に違いない。
ほんとに、こんなに俺を落ち込ませたり喜ばせたりできるのはお前だけだよ。

「…俺もだ」

だから、早く俺を好きになれ。
そんな願いを込めながら、原口の頭を軽く撫でてやるときょとんとした顔で俺を見た。

「どうした?」

あまりにじっと見つめているので不思議に思い覗き込んでやると途端にがたん!と立ち上がった。


「お、おれっ…!鳥小屋いかなきゃ…!じゃあ!」
「原口?おい…!」


俺の制止を聞かずに、振り返ることなく教室からバタバタと駆け出す原口を呆然と見送ってしまった。


中途半端に上げた手を力なく下ろす。
…撫でたのが悪かったんだろうか。あまりにかわいくて、思わず頭を撫でてしまったんだが、気持ち悪かったのだろうか…

原口のいなくなった席で一人頭を抱えうなだれる。
ふと見ると、原口の携帯が床に落ちていた。先ほど勢いよく立ちあがった時に落ちたんだろう。鳥小屋だって言ってたな。

原口の携帯を掴んで後を追うために教室を出た。

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