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2

それから俺は、原口をよく観察するようになった。
くるくるとよく笑い、よくちょこまかと動いている。暇さえあれば鳥の飼育小屋に行き、せっせか掃除をしているようだ。
筆箱や下敷きなど、全部鳥の写真や絵の入ったもの。どんだけ鳥好きなんだ。

毎日観察して、原口の笑顔を見ると自然に自分の顔も綻んでいるような気がした。

原口のどんな顔も楽しそうで好感を持っていたが、一番好きなのは鳥小屋にいるときの笑顔だった。初めてインコに笑いかけている原口を見た時。おもしろい奴だな、が変化するのは一瞬だった。


俺にも、あんな笑顔を向けてくれないだろうか。


原口とは初めのあの日以来一言も言葉を交わしたことがない。日直で一緒になっても、原口とはなんだかんだお互いに用事があって誰かと交代してもらっている、ということばかりだった。

自慢じゃないが俺は結構モテる。呼び出しなんてしょっちゅうだし、手紙だって毎日のようにもらう。原口に惚れるまで誰ともつき合ったことがないとは言わない。中学の時なんて彼女や彼氏が途絶えたことはなかった。

『つき合ってほしい』と言う奴らとそれなりに交際して結構手も早いほうだったけど、そんな俺が原口には自分から一言も話しかけることができない。


『おはよう』の『お』さえ言えないのだ。


原口は可愛らしい見た目のため、よく告白されているようだった。だが、全て断っていると聞いて心底ほっとする。
見ることしかできない俺は、呼び出しを受ける原口がどうか誰の告白も受けませんようにと祈っていた。


しばらくしてからのこと、原口が頬を真っ赤に晴らして登校してきた。どう見ても平手打ちの後だ。…誰に、なんで。

「おい、それどうした。」

俺は思わず声を掛けていた。突然話しかけられ、原口がきょとんとして俺を見上げる。くそう、かわいいじゃねえか。

「あ、うん。ちょっと喧嘩…?」

言葉を濁す原口に、かっとなる。なんだ。そんな痕を付けられるほど誰と揉めたってんだ。

「はん。痴話喧嘩か。大人しそうな顔して意外に軟派なんだな」
「な…!」

原口が傷ついたような怒ったような顔を向けてきた。しまった、とは思ったが後の祭り。素直に謝る気になれなくて、そのまま原口を無視して自分の席に戻った。


それから、原口はよく生徒会長をじっと見つめて悩ましげな顔をしていることが多くなった。俺はピンときた。原口は、生徒会長が好きなのだ。だが、会長には最近恋人ができたと聞いている。しかも、会長がべた惚れなのだと。
そんな叶わぬ恋をしている原口を見るのは辛かった。あいつが会長を見なくて済むように、会長に目をやっているときは俺の方を見る様に仕向けた。想いを告げる勇気もないくせに、原口に対する独占欲はいっちょ前な俺は嫉妬も手伝ってわざと原口を怒らせるようなことをしてでしか関心を向けることができない。


毎日、俺の言葉で傷つく原口を見て俺も傷つく。
これじゃ入学間もないころ原口に絡んでいたやつらと変わらないな、なんて自虐的に笑った。

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