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MIKIM様からのリクエストで、『強面バンビに出てくる副会長のお話』です!
こちらはずっと番外編でスピンオフにしようと思っていたのですが、リクエスト頂いたのでこちらにあげさせていただきます(*^_^*)
切甘になります、ちょっとだけ山本君かわいそうな目に遭いますので苦手な方はご遠慮ください。
頑張ります!
ではどうぞ♪
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僕は、生まれてきてはいけなかった。
邪魔な存在。望まれた子供ではない。
「いいわね、粗相のないようにするのよ。」
「今まで育ててきてやったんだ、きちんと恩返しするんだぞ。」
「はい、わかりました。お義祖母さん、お義祖父さん。」
僕の返事に満足そうに微笑み、やっと役立たずが役に立つ時が来たと言う態度を隠そうともしない義祖父と義祖母に深々と頭を下げる。
僕は、河村愛夢(かわむら まなむ)。…今日からは、山本愛夢(やまもと まなむ)になる。
僕の母は、私生児として僕を生んだ。可憐で、強くて、優しい母。父のことは教えてもらったことはなかったけれど、いない父の分まで、いや、それ以上に母は僕を愛してくれた。大事に育ててくれた。
でも、そんな幸せな日々は6歳までで終わってしまった。
母と二人で暮らすアパートに、突如見知らぬ男たちが現れて母から僕を引き離した。訳の分からないまま車に乗せられて、ついた先はとても大きなお屋敷だった。
車から下ろされて屋敷の中に連れられ、怯えて泣く僕の前に現れたのが義祖父と義祖母だった。
僕はそこで初めて自分の出生について知らされた。
母は、この屋敷の住込みの使用人だったこと。そこで屋敷の主人である父に恋をして、僕を身ごもったこと。母は嫌がる父を無理やり誘惑し、勝手に僕を身ごもって自分と結婚するように迫ってきたこと。そのせいで父は本当に愛する婚約者がいたのに、その婚約者に婚約破棄をされてショックのあまり自殺をしてしまったこと。
「お前らのせいで私たちは大事な大事な一人息子を失った。何もかもお前とお前の母のせいだ。」
「本当なら顔も見たくないが、今現在私たちには跡継ぎがいない。不本意だが我が会社をつぶしたくはない。だから我が子の血を引くお前を跡継ぎにしてやる。ただし、お前に子ができるまでだ。お前は私たちの為だけに生き、私たちの為に息子の血を引く子を早く作り正式な跡取りを私たちによこすんだ」
僕は泣いて泣いて家に帰してほしいと訴えた。だが、義祖父はそんな僕をひどくせっかんして、『お前の母は5000万でお前を私たちに売ったのだ。お前は母にも捨てられたのだ』と言った。
僕はその日から、義祖父母たちの為だけの操り人形のように育てられた。
僕は無理やり連れてこられたものの、義祖父母たちの戸籍には入れられなかった。汚れた女の子である僕を入れて、高貴な山本家戸籍を汚すわけにはいかないのだそうだ。
僕が汚れていると言うのなら、僕の子供だってそうなるんじゃないのだろうかと考えたがかわいい息子を直に奪った母の子である僕と、まだ生まれてもいない僕の子供は別物らしい。
僕は形だけでも会社を継ぐために有名な私立の小学校に入れられ、優秀な成績を収めることを強要された。
それだけではなく、社交マナーや食事や日々の生活に至るまで、義祖父母の意にそぐわなければ躾と称してひどく折檻をされた。
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