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5

「は…?」

俺が?
不良を好きだって?

輝はぎゅっとシーツを握りしめ、ぼろぼろと涙を流している。


「お前が…、5年生くらいの時、一緒に見てたテレビに出てた不良見て、『かっこいいな』って…。」

輝の言葉に、うっすらと記憶に残るその番組を思い出す。確かひどく古い再放送のドラマかなんかじゃないだろうか。義理人情に厚い、そのご時世ではつっぱりという名のヤンキーが、自分を慕う仲間を集めてチームを作り総長になった。自分の学校の生徒が他の学校の不良に絡まれているのを助けたり、意味のない暴力をふるったりすることはない正義の味方みたいな総長の話だったはず。

「よ、洋太が、テレビ見て、総長みたいな人、惚れちまうよなって。そう言ったから、俺、総長になろうって…。な、なのに、嫌いとか言われて、俺どうすりゃいいの。洋太に惚れてもらうために総長になったのに、嫌われるならそんなものなるんじゃなかった…!」

まるで小さい子のようにわんわんと泣く輝に唖然としてしまった。


じゃあ、なに。輝が総長になったのは俺のため…?
ていうか…


「惚れてもらうためって…、なんで…」
「…っ、洋太が、好きだからに決まってんだろ!」


泣きながら叫ぶ輝の言葉に、頭が真っ白になった。


…すき。好き、……好き?


かあ、と顔が熱くなるのがわかる。心臓が、どくどくと走った後のように激しく動き出す。と同時に、ギュッと締め付けられるように苦しくて。


「…でも、お前、女とっかえひっかえだったじゃん。ふ、不良になっちまってからは俺といることなんてなくなったし、学校で話しかけもしないし、き、今日だって、お、女の子と、き、キスして…」

昼間見た光景を思い出し、自分の胸のあたりをぎゅっとつかむ。輝はいつだって、女の子といたじゃないか。…俺なんか、いなくても平気そうだったじゃないか…。

「俺は誰とも付き合ったこともヤったこともないもん!女は勝手に引っ付いてただけでいつも無視してたよ!」

もんってなんだ。なんかこいつ、キャラがおかしくなってないか?
でも、この話し方は…

「…輝、昔に戻ってる」

輝は不良になる前は、えらそうな話し方なんかしてなくてどちらかというとガキっぽい話し方だった。不良になってから話し方が変わっちまって、俺は余計に輝が遠く離れたような気がして寂しかった。

「昔も今もないよ。お、俺、ほんとはずっとこんなだもん。が、学校で話しかけなかったのだって、あのテレビで見た総長みたいにクールにならなくちゃって思ってたから…。無理してえらそうぶってないと、おれ、よ、よーたにくっついて離れたくなくなっちゃうから。」


『よーた』


輝が本来、ずっと昔から呼んでた呼び方に涙が出そうになった。

「よーた。俺、よーたが好きだ。よーたの為だけに不良になったんだ。
…ね、よーた。聞いてもいい?
さっき、なんで『女の子とキスした』って俺に言う時、なんでどもったの?なんでそんなに悲しそうな顔したの?」

何かを懇願するように、切ない顔で俺を見つめながら問いかけた輝の言葉を俺は頭で反芻した。


なんでどもった?

…俺が見たことを口にして、事実を認められるのが怖かったから。

なんで悲しそうな顔したの?

…輝が、女の子とキスするなんて…。


「ね……、

やきもち、やいた…?」

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