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3

輝が、女の子とキスをした。

あたりまえだろう。輝は男だ。かわいい女の子なら喜んでキスくらいするだろう。
女の子だって、輝ぐらいいい男ならそりゃ自分からキスをねだったりもするだろう。


でも、本音を言えば見たくなかった。輝がモテたり、女の子をとっかえひっかえだっていう噂ぐらいは耳にする。でも、この目で実際に輝が女の子とそういった行為をするのを見たのは初めてだ。

ショックだった。自分の知らない輝を見せつけられた気分だった。

不良になってから、俺は夜中に無遠慮に部屋に入ってきてベッドで俺を抱きしめながら眠る輝しか知らない。

「…幼馴染でも、知らないことなんてあって当たり前か…。」

ぽつりとつぶやきながら、痛む胸をぎゅっと押さえた。

放課後、ゴミ捨てに行くと焼却炉の近くに数人の不良がたむろしていた。昼間輝の周りにいた奴らだ。特に気にする事も無く用事を早く済ませようとゴミを焼却炉に落とし、くるりと向きを変えると目の前にそいつらが立っていてものすごく驚いた。ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて俺を囲むようにしている。

「なに?通してほしいんだけど」

平静を装って行き道を塞ぐ不良に声を掛けると、一人の不良が煙草の煙を俺に向かって吐き出した。

「な、なん…っ!げほっ、ごほっ!」

思い切り吸い込んでひどくむせるとげらげらと笑いだした。なんだってんだ。

「お前さあ、今日廊下からじっと俺らを見てただろ?」
「そうそう。んで、なんか悪口言ってたよなあ?不良って嫌い、だっけ?」
「平凡な良い子ちゃんにそんな悪口言われるなんてなあ、俺ら傷ついちゃったんだよねえ」

友人との会話のことを言ってるんだろうか。確か、あの時廊下の窓開いてたっけ。にしても、よく俺の顔なんて覚えてたな。どこにでもいるようなモブみたいな特徴のない顔してんのに。

「あー…、…ごめんなさい」

昼間の態度が気に食わないってんならとりあえず謝っとくか。そんで早く解放してくんないかな。

「謝ってすむなら警察はいらねえよな?」
「なに、昼間は怖いとか言ってたくせにその態度。バカにしてんの?そんなもんで許せるか、っての!」
「う…っ!」

言い終わるかと言う時に、一人の不良が俺の腹にケリを入れた。思わずその場にうずくまる。

「あー、ごめんなあ。俺ら不良だからついつい手が出ちまったわ〜」
「手じゃなくて足だろ〜、手ってのはこっちだこっち!」

げらげらと笑いながら、蹲る俺に不良たちが一斉に暴力を振るい始めた。


殴られながら、ふと輝の事を考えた。喧嘩が強いって友人が言ってたっけ。こんな痛いのに、殴ったり蹴ったりよくするよな。あいつ、小さい頃はちょっとこけただけで泣いたりしてたのになあ。

俺は、自分が殴られている事実よりも輝がこいつらと同じ人種とされているんだということにショックだった。

違うよな、輝。お前は不良だけどこいつらとは違うよな。輝は、意味なく人を傷つけたりなんかしないよな。こんな理不尽な暴力は振るわないよな…?

目から一筋の涙がこぼれた時、俺を殴っていた不良がそれを見て指さして笑った。

「こいつ、泣いてるぜ!」
「おっもしれ〜!おら、もっと泣けよ!」

涙を流す俺に不良が笑いながら手を振り上げた。が、その手は俺に向かって振り下ろされることはなく、後ろにいる人物によってがしりと掴まれていた。


「…なにやってんだ、てめえら」


そこには、怒りの形相で不良たちを睨みつける輝がいた。

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