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2

「…おい」
「ん〜?なんだよ、いいから寝かせろよ…」

輝のダルそうな返事にいらっとする。いいからってなんだ、よくないから声を掛けてんだ!
輝はベッドに入ると、これまた必ずと言っていいほど俺を抱きこんで眠る。俺の方が小柄なせいかすっぽりと包みこまれるようにして抱き込まれるのでちょっとむかつく。というか、なんで俺を抱いて寝るんだ。裸で抱きしめられてって、傍から見たらこれほどおかしな光景はない。

「…女にしろっての…」

自分の言ったセリフに若干胸を痛めながら抱きしめられた腕が心地よいな、なんて心のどこかで考えながら小さくため息をついて目を閉じた。



次の日、学校へ行き友人と教室移動のために理科室へ続く一階の廊下を歩いていると廊下に面した校舎裏にたむろする不良の軍団が目に付いた。
皆に囲まれるようにして輪の中心にいるのはいわずもがな輝である。

輝はまるで王のように不良を従え、傍らにかわいい女の子をはべらせている。輝は昔からものすごくモテた。その圧倒的な存在感とオーラで周りにいる人間すべてを魅了する。
不良の総長という恐れられるはずの立場でありながら、一般生徒からも好かれよく声をかけられるし、教師だって苦い顔をするどころか一目置いている。誰もが皆輝に憧れ近づき、その特別な存在になりたがるのだ。


…小さい頃は、俺のあとばっかついてきて犬っころみたいだったのになあ…


この光景を見る度に俺は輝が自分とは違う、手に届かない存在なのだと思い知らされるようで悲しいような寂しいような気持ちになる。

朝になると輝は一度必ず自宅に戻る。そして俺とは別々に学校に行く。学校で輝は一切話しかけてはこない。俺と輝が幼馴染であると知る者はこの学校には一人もいない。
いつからだろうな。輝が俺を学校で避けはじめたのは。小学校の間はいつも一緒にいて、いつだって輝の隣にいたのに。
輝の隣で誘うような目を向け腕に絡みつく女の子に何だかもやもやが止まらない。

「うわ、不良どもが溜まってるなあ。怖え〜。」

一緒にいた友人がじっと窓の外を見ている俺につられて同じように窓の外を見て、その光景に心底嫌そうな顔をした。

「あの真ん中の奴、えらい喧嘩強いんだってな。俺、不良って嫌い。喧嘩なんかして何がおもしろいんだろ。意味なく暴力振るうって最低じゃん。」

そうなのか。輝、喧嘩強いのか。でも、別にあいつは意味なく暴力振るうような奴じゃないぞ。

友人の言葉に反論が浮かぶも、なんとなく口にすることはできなかった。

「うわっ!こっち見た、怖え!早く行こうぜ!」
「あ、ああ」

急に友人が俺の手を引きその場を走り出した。ちらりと一度だけ目線を輝の方に向けると、輝の横にいた女の子が輝にキスを仕掛けているところだった。
驚いて顔を背けた俺は、その場を友人と走り去る俺を輝がじっと見ていたなんて気付かなかった。

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