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俺は購買の品物を手に屋上の扉に手を掛け目を閉じた。ほんとは時間にわざと遅れるように歩くつもりだったのに、気が付けば時間に間に合うように痛む体にムチ打って必死に走ってる自分がいた。
扉を開ける前に、深呼吸を一つ。…時間はきっと過ぎてしまっただろう。意を決して扉を開け、わざと明るい声で屋上へと足を踏み入れた。
「お待たせしました〜!」
屋上にいる皆を見渡し、違和感に気付く。…俺を殴った奴らの姿と、幹部の何人かがいなかった。不思議に思い首を傾げているとそーちょーが俺を呼んだ。
俺がそーちょーを追いかけて側に来て下さい!とお願いすることはあっても、総長が俺を近くに来いと呼んだことはない。何事かとドキドキしながらもとてとてと近くに行く。
間近で見るそーちょーは、ものすごくカッコよくて。思わず見とれてぽやんとしてしまった。
「太一郎」
名前を呼ばれてはっとする。いけない。俺、今日で諦めるつもりだったのに。
俺はふるふると軽く頭を振って、にっこり笑ってそーちょーに頼まれたパンをさしだした。
「そーちょー、頼まれたもの買ってきました!」
「…ああ」
俺からパンを受け取ると、そーちょーは近くにいた幹部の一人を呼んでパンを渡した。
「…でも、時間、過ぎちゃいましたよね。えへへ、ざんねん。またおれ、間に合わなかったやぁ〜」
わざとへにゃりと笑って頭の後ろで腕を組む。
そーちょーは何も言わずにただじっと俺を見ていた。
…そーちょー。かっこよくて、つよくて、やさしい、俺のヒーロー。
でも、でもね、おれ、嫌われてるんだよね。そりゃそうだよね。俺みたいな何のとりえもない、よわっちい奴にすきすき付きまとわれても迷惑だったよね。
ごめんなさい。いままで、いやな思いさせてごめんなさい。
これで、あきらめるから、最後にもう一度だけ。想いを伝えることを許してね。
「…そーちょー、おれ、そーちょーが好きです…」
俺が最後にと決めて告白したと同時に、視界が真っ黒になった。
…え?なに、なんで?
何が起こっているのかわからずに顔をあげると、そこにはとてもとても優しく微笑むそーちょーがいた。
「…俺も好きだ」
言葉と同時に、俺の口がふさがれる。なに?何が起こってるの!?
「んうっ…!」
混乱していると口の中にぬるりとした熱いものが差し入れられ、俺の舌を絡めて舐めあげた。
「ふぅ…っ、ん、…んぁっ、んん…!」
逃げようとする舌を追いかけ吸い上げ、拘束から逃れようにもがっちり抱き込まれているうえに後頭部を押さえられて逃げられない。どれくらいやられたのかもわからない。気が付くと俺は上手く息ができなかったため軽く酸欠を起こしてくたりとそーちょーの胸に頭をもたれさせていた。
「そ…、ちょ…、?」
なんで?と顔を上げると、そのままふわりと抱き上げられた。ふああ!ここここ、これ、おひめさまだっこだあ!
びっくりして思わずそーちょーの首にしがみつくとそーちょーがふ、と笑って俺の耳に口づけた。
「ひゃん…!」
「いい子だ。そうやってしがみついてろよ?」
おれに優しく耳打ちするとそーちょーはそのまま出口に向かって歩き出す。
「アツ、あとは任せた。」
「りょーかい。たいっちゃん、がんばれ!」
何がガンバレなんだろう。よくわからないけどとりあえずがんばります〜と小さな声で返すと副そーちょーがとても嬉しそうに手を振った。
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