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5 総長side

俺には、目に入れても痛くないほど愛してる奴がいる。
背が少し低めの、至って平凡な男だ。
そいつとの出会いは約1カ月ほど前、街でクソ共に絡まれているのをたまたま助けたのがきっかけだった。そいつは俺をまるでヒーローかなにかを見るようなきらきらした目で見つめ、後を付いてきたかと思うと
「チームに入れてください!」
と頭を下げてきた。

冗談じゃねえ。こんなフツーのやつなんざチームに置けるかってんだ。

俺はそいつの首根っこを掴むとたまり場からぽいと放り出してやった。
その時にうるうると目を潤ませて見上げたそいつにまるでペットを棄てたような罪悪感が湧いたが無視して扉を閉めた。
中に戻ればいいものを、扉の向こうでぐずぐず泣くそいつが気になって気になって扉前から動けずにいたら、また別の奴に絡まれて連れ去られそうになっているのに気づき慌てて扉を開けてそいつを助けた。

「そーちょー、ありがと〜」

と泣きながらへらりと笑われ、下腹に一気に熱が集まった。
今まで感じたことのない、欲望と独占欲が胸に渦巻く。こいつは、俺のものだ。一瞬にして捕われた俺は目の前のそいつをじっくりと俺に惚れさせて俺から抜け出せなくなるようにしてやろうと思った。


俺はそいつを、あくまで仕方なしにを装ってチームに入れた。

そいつは毎日、ふわふわとした笑顔を浮かべながら
「そーちょーが好きです!」
と言ってくる。俺はわざとそっけない態度をとる。それに必死になって追いすがる。


もっとだ。もっと俺に堕ちてこい。もっともっと、必死になって追いすがれ。


ある日、アツが太一郎を膝に乗せようとした。
嫌がるあいつを無理やり抱き上げるアツに、腸が煮えくり返っていたが平静を装って制止する。

「ほんとは抱きしめたくて仕方ないくせに、何をやせ我慢してんだか」

太一郎がいなくなったあとアツが言う。
お前にはわからないだろうな。だって俺の方があいつを深く愛してて、俺だけがハマってるだなんて不公平だろうが。あいつも、俺にハマればいい。

ゲームを始めて3週間。あいつが俺に好きだと言い続けてもうすぐ500回になる。ちゃんとそんなことまで手帳に記録しておくくらいあいつに夢中だ。
500回になったら、俺はわざとストップウォッチを押さないでおこうと思う。ゲームのご褒美として俺をやるよ。

だから早く俺にもっと好きだと言え、と思いながらその日を心待ちにしていた。

そんなある日、弱いくせにうちに喧嘩を吹っかけてきたチームがいた。相手にしなくてもいいのだが逃げたと吹聴されても困るんじゃないかとのアツの助言で、仕方なしに潰すことにした。俺は抗争をするにあたって、皆に箝口令を敷いた。
『太一郎には、このことを知らせないこと』
あいつは元々不良じゃない。喧嘩なんてしたこともないだろう。なんせあいつがこのチームに入ったのはただ俺のため。

かわいいあいつに怪我をさせるわけにはいかない。巻き込むわけにはいかないのだ。
だが、次の日、屋上に現れた太一郎を見て言葉を失った。なんだその顔は。誰にやられた。

アツに問い詰められ、太一郎は『階段から落ちた』と言った。そんなわけないだろう。それはどう見ても打撃痕だ。

「それよりっ!購買の皆さん、買ってくる品物言ってください!今日こそは負けませんよ〜」

わざとらしく元気に言う太一郎に、俺は一言も声を掛けなかった。アツに言い、いつものように太一郎に今日の買い物と金を渡すように指示する。太一郎はメモと金を受け取った後、足を引きずりながら屋上から出て行った。

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