×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




5

その次の日、神子と王がついに結ばれたのだと祈りと祝福を捧げるもので宮殿の庭は埋め尽くされた。

昨夜世界中を覆ったあの金色のカーテンは神子と王が結ばれた時にのみ現れる神の祝福なのだと。古来より代々受け継がれる古文書にそう記されていた。

神子を一目見ようと、多くの者が庭に集まりその上にあるテラスを見上げる。集まった民衆の中にはもちろんあの幸と荘司が初めて訪れた町の皆もいた。

やがて、王が神子を連れて姿を現す。その姿に集まった民衆は祈りを捧げ、涙を流し王と神子を祝福した。だが、その中で驚きのあまり言葉をなくす民衆もいた。言わずもがな、幸たちを神子として王の元へ送り出した町の者である。

王の隣に困惑したように立つのは幸ではなく、荘司だったのだから。

やがて庭に集まった民衆に応えるかのように手を挙げた王が荘司を引き寄せ皆の前で口づけた。その途端、荘司の体は柔らかい金の光に包まれる。おお、と感嘆の声を上げる民衆の中、荘司につらく当たった町の者たちは顔を青くしてがたがたと震えていた。


テラスから宮殿の中に戻り、玉座に座るとアレク王は荘司を自分の膝の上に乗せる。そこへ、ぎゃあぎゃあとわめきながらじゃらじゃらと鎖につながれた者たちが兵士の手によって連れてこられた。


「離しなさい!身の程知らずが!」
「てめえら、覚えてやがれ!」
「離せっ、離せよ!俺は神子なんだぞ!こんなことしてただで済むと思ってんのかよ!…あっ、お、王様!それに、しょ、荘司?」


床に這いつくばらされた幸が顔を上げ、目の前の玉座にいるアレク王と荘司を見つけ怪訝な顔をした。
幸の言葉に、同じように鎖でつながれたビショップと仲間たちも顔を向ける。

「な、何してんだよ荘司!王様の膝になんか乗っちゃって、いけないんだぞ?
荘司は神子についてきた悪魔なんだから、お前が鎖で繋がれなきゃいけないのにどうして俺が繋がれてんだよ!」
「そ、そうです。アレク王よ、その者は汚れた者なのです。ここにいるコウこそが、神子なのです!」

幸とビショップの言葉に、アレク王はくつくつとのどの奥で笑った。そして、膝の上にいる荘司の体を抱きその頬に口を寄せる。荘司はそれに恥ずかしそうに身を捩り、顔を朱に染めて俯いた。
その荘司から放たれる今までの荘司にはなかった色香に、思わず皆がごくりと喉を鳴らす。

「…その者が、神子だと?なぜそう思うのだ」
「そ、れは…、占い師が言ったからだよ!現れる神子は、『黒き悪魔を引き連れた金に輝く少年である』って!」
「そ、そうだ!俺たちの前に現れたコウは金に輝く髪を持っていた!そしてそいつは黒い髪、占い師の言うとおりだろうが!」

魔術師と戦士が叫ぶと、アレク王はさもおかしそうに大声を出して笑った。

「な、なにがおかしいんだよ!」

真っ赤になって憤慨する幸に、アレク王は心底見下した視線を投げつける。

「…貴様が、金に輝く、だと?ならば見るがよい、真の神子の輝きを」

にやりと笑い、アレク王は俯く荘司の顔を上げさせ口づけた。その途端、荘司の体が柔らかな金色の光に包まれる。それを見た幸たちは、信じられない、と目を見開いた。そして、困惑した目を幸に向ける。

「あ…、ちが、違う…、俺、俺が神子だ、俺が、俺がっ…」

なんで、どうして、と首を振る幸を見つめる三人の目が徐々に疑惑の眼差しに変わっていく。

「…真の神子たるものの証とはその容姿ではなく魂から発する輝きにあるのだ。貴様ら愚かな者どもはおおかたその者の容姿に惑わされたのであろう。…容姿でも、私にはその者のどこがよいのかは全く理解できんがな。」

アレク王は愛しくてたまらない、と宝玉でも眺めるかのごとくうっとりとした目を荘司に向ける。荘司は恥ずかしくてたまらなくなってアレク王からついと視線を逸らした。その何気に逸らした視線の先に、いつも自分を虐げて嘲笑っていた愚かな幼馴染が映る。荘司と目があった幸はぎりぎりと憎しみを露わに荘司を睨みつけた。


「魂だって?そんなの、荘司より俺の方がキレイに決まってるじゃないか!荘司、あれだろ?なんかトリックでも使ってるんだろ!?いけないんだぞ、俺に王様を取られたくないからってだましたりしちゃ!
王様、荘司はいつも嫌われ者だったんだよ。俺がいつも庇ってやってたんだ!この世界に来たときだって、一緒に旅してた時だって、皆にいじめられてるのを俺が助けてやってたんだ!だから魂がきれいなのも俺の方なんだ!」


叫ぶ幸を、アレク王は心底見下した目で睨みつけ、荘司は逆にとても悲しそうに見つめた。

[ 384/459 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top